「さゆり姉さんが言ったんだ…『あの子の指が欲しい』───って」
囁くんだ。
姉さんが。
僕を後ろから抱きしめて言うんだ。
「ふぅん…で?」
「…?」
「お前の姉さん、どんな顔してお前にそれをねだったんだ?」
「………」
《転校生》は言う。
姉さんはどんな顔をしてそれを言ったかと。
姉さんの、顔。
姉さんは囁く。
優しい声で僕に言う。
『あの子の指が欲しい』と。
優しく、優しく、僕を後ろから抱きしめて。
後ろから、抱きしめて。
「───お前には見えないんだろう、姉さんの顔が」
どうしてだろう、僕の大好きな白い綺麗な指は今だってこうして僕の肩の上にあるのに。