黒き砂の神はボクに《力》を授けられた。
同時に《墓守》という役目もお与えになった。
神はボクに、この国で生きていくための価値と居場所を下さった。


『敢えて言うならば、心が得をするのでありマスッ。
 大切な人を守れて、その人の役に立てる…それが嬉しいのでありマス』


墓を荒らす者を排除するのがボクの役目。
そして彼はこの墓を荒らす者。
だからボクは彼を排除する。

彼を倒せばボクは生きていける。
《墓守》という役目を全うする限り、価値を全うする限り、
ボクには居場所がある、だから生きていける。
独りではないから。
アラーが共に在るのだから。
《墓守》である限り、ボクは神と共に在れる。


『葉佩君は僕の大切な…、友達、だからね』


彼が居なくなればいい。
彼さえ居なくなれば全ては元に戻る。
神はこれからもボクと共に在り、これからもボクは生きていける。

そう、生きていける。


『トトクン…、得とか、そんなの関係ないよ。
 キミだって大切な友達が…、守りたい大切なものがあるでしょ?』


白く冷たい月のような目で見られても。
色褪せた砂が乾いた風に流されるように目を背けられても。
夜空に浮かぶ音の無い黒い雲のように其処に無いものとされても。

生きて、いける。
神はボクと共に在るから。
独りじゃないから。
だから生きていける。


「…ッ、神はお前に何をしてくれた!?」


神が共に在るから、ボクはこの国で独りでも生きて───


「確かに神はお前に自分を保つための力と役目をくれたかもしれない…」





───"独りでも"、生きて?





「だが、神はお前に一度だって言葉を掛けてくれたか───!?」





僕ハ、独リデ、生キテ。





「お前が欲しかったのは力や役目なんかじゃない」


違う、ボクは独りなんかじゃない。
神が共に在るのだ。
独りではない。
独りなわけがない。

ボクは独りなんかじゃ。


「ましてや神なんかじゃないはずだ」


ただ真っ直ぐにボクへと向かって走って来た彼は。
鋏を、包丁を、鑿を。
ボクの悲しみの全てをその掌で受け止めて。
最後にこの胸倉を掴み取った彼は。





「───お前が欲しかったのは、人との繋がり、大切な"誰か"の言葉だ」





『ジェフティメス、誇り高き神の名を持つ勇敢なる我が子よ。
 【勇敢な男は自分の事を最後に考える】、いつかお前もそんな人物と出会えるだろう』





「そうだろ、トト。
 『ジェフティメス』、誇り高き神の名を持つ子よ





そこかしこに血の滲む傷だらけの顔で、まるで太陽のように笑った。