「夷澤君って可愛いよね」
言ってセンパイは、ほぼ平行な視線でもって俺の頭を撫でた。
BITE!
「………は、はァ!?」
「弟が居たらこんな感じかしら」
そうしてまたいつものように。
最後にはそうやって楽しそうになんて綺麗に笑うんだ。
「お、弟って…!」
「そう。伊澤君みたいな弟がいたら可愛くていいなぁって」
「1つしか違わないっすよ!?」
「まぁそれはそうだけど…それに」
「それに何すか!?」
「夷澤君とは3cm差だし」
「───すぐに180の大台に乗りますから!!」
ま、負けんな俺…!
クソ…ッ。
センパイの斜め後ろではくつくつと笑ってやがるあの男、皆守甲太郎。
やっぱアイツ、敵だ。
いつか泣かす。
ぜってーぶち殺す。
「おい、。
そろそろ行くぞ」
「行くぞって…また私を"道連れ"にするつもり?」
「お前は俺の安眠道具の一つだからな」
「私は抱き枕か何か…?」
「だ、抱き枕ァッ!?」
まさかセンパイを抱き抱えて寝てんのか、アイツ…!!
センパイの肩越しに寄越される、得意げな、赤ら様に勝ち誇った笑み。
クソ、マジでムカつく。
常に自分の特等席とばかりに寄り添うようにセンパイの傍らに居座るあの男。
何様だ。
わざとらしく見下ろすよう俺へと寄越すその視線。
センパイにまとわりつく紫色の煙ごと撥ね付けるように睨み返してやった。
「じゃあな、伊澤」
「まったく…それじゃあね、伊澤君」
見てろよ。
いつか必ず。
いや、もうすぐにでも。
センパイの隣を空け渡させてやる。
「また暇だったら"夜遊び"に付き合ってやってね?」
そして、センパイからほんのりと香るそのアロマごと消し去ってやるからな。
夷澤はワンコ扱いされるといい。
でもってヒロインを巡って皆守を噛み殺す勢いで噛み付きまくるといい。