砂の城


という女は。
他者が重い過去と暗い時間とを練り合わせて心の奥底へと築き上げた、
それこそ必死の思いで瞬々守り抜こうとする【砂城】にも似たそれを、
見極め、見抜くことに飛び抜けて長けている。

『見極める』『見抜く』という比喩が如何なるものかといえばそれは、
どこにどう触れたらならば崩れて、どこをどう明かせば建ちいくかを、
実に精密に、遠目からも瞬時に的確に理解・把握するのだ。

然るが故に。
それが今少しの支えを必要としているのならば、
嘘偽りの無い心を映した言葉でもって、
それが細波にも足下を掬われるような脆いものならば、
嘘や見て見ぬフリを用いて器用にも補強してみせる。


なぁ、
お前の目に映る俺の【砂の城】はどうだ?





血色の生ぬるい波と混じり合っては醜い泥となって、お前の足下を巣食ってるんじゃないか?


この心は、お前という優しい水音を得てその隙間を埋めようとするから