We could't say them
now we just pray them
Words that we could't say





「…物寂しい曲だな」
「ごめん、起こした?」
「いや」


今日も今日とて屋上で、と二人で過ごす午前。
普段と変わらず、《昼寝同盟》の特等席たる給水塔にどっかりと背を預けると、
しばらくは互いに他愛も無い事柄をだらだらと口にして。
その後、これまたいつも通りアロマを心行くまで味わった頃に、
何を言うでもなく微睡みを求めて各々自然と目を閉じた。
そうこうしてしばらく経ち、うとうとといい具合に意識が拡散し始めた頃、
そっと鼓膜を撫でるように耳を打ったのは、隣から零れた静かな歌声だった。


「煩かったら言ってね。すぐやめるから」


別段、煩いとは思わない。
むしろ子守唄には丁度良い。
「ああ」と、言外にも歌ってろと手短に告げればは笑って空を見上げた。


We could't find them
We tried to hide them
Words that we could't say


再度紡がれ始めたその曲。
その耳に心地良いクイーンズイングリッシュでは、
生粋の日本人である自分には何を言ってるかほとんど判らなかったが、
メロディの端々に度々聞こえてくる『could't』という単語に、
何をか悔やみ続けている歌詞なのだろうと、そう思った。


Sometimes baby
we make mistakes
dark and hazy
prices we pay


柔らかな、けれど切なげに掠れた女の歌声。
目を瞑る自分に相手の表情など窺えるはずもなかったが、
もしかしたら苦しげな表情しているのかもしれない。
泣きそうな顔をしてるのかもしれない。
根拠も無く、そんなことを思う。

けれど。





「We could't say them,
 now we just pray them.
 Words that we could't say …」





僕らが言えなかったから
祈りだけが残ってる
言えなかったその言葉





「─── Words that we could't say …」





最後にゆったりと歌い上げられたそれから聞き取れたのは。
そんなまるで自分達の行く末を暗示するかのような歌詞だった。


菅野さんの曲ホント好きだー。

image music 【 WORDS THAT WE COULD'T SAY 】 _ 菅野よう子.