10.


「なぁ、九龍」


この先、どう転んでも俺は死ぬ。
九龍に殺されるか。
九龍を殺して遺跡と共に滅ぶか。
俺の進む先に待ち受けているのは死。
否、死以外の終着地など許さない、認めない。


「俺は、最後に見る"物"が何か知りたい」


だからこそ俺は、この目が最期に映すものが何かなどと不毛も極まる事を考えているのか。


「知ってるか、皆守」
「何をだよ」
「死体が風景に同化して見える理由」
「………」


最後に見る物。
それはお前の姿態か。
はたまたお前の死体か。





「───人間は、死ねばただの"物質"になるからだよ」





隣にある、プラスチックの作り物めいた爽やかな笑顔。
ああ、死のうが死に損ねようがこの俺が最期に見る"物"はこれなのかもしれない。