「なぁジェイド」
「何ですか、陛下?」
「もしもが俺と浮気していたとしたらどうする?」
「やだ、皇帝陛下の妾なんてちょっと憧れるかも───」
「速やかに既成事実を作ります」
「ほぅ」
「………」
「既成事実。
 既に起こってしまっていて、広く承認されている事実。
 または承認が当然とされる事実のこと」
「やめて。無闇に私から辞書をひく手間を奪わないで」
「軍の名家、カーティス家付きの医師は有能ですよ。
 内科、外科を問わず産婦人科まで幅広くこなしていますから。
 私を取り上げたのも実は彼なのですが…」
「いい。聞きたくない。
 アンタの産声や出生の瞬間なんて興味無いの。お願い、推して量って」
「これがまた愛くるしい赤ん坊だったそうですよ」
「判ってる。判ってるの、次にアンタが何をほざこうとしてるかなんて。
 見え見えのスケスケなのよ。
 だから推し量ってっていうかもういい加減推し量れ」
「貴女と私の子どもならさぞや利発的で愛くるしいことでしょうねぇ」
「………言ったし。本当に一語一句違わず言い切りやがったしこの男。
 どうしてアンタはそうも良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らないの。
 たまには裏切ってよ。
 っていうかこの手は何よ。なに笑顔で人のお腹撫でてるのよ。
 強制猥褻罪で訴えるわよこのセクハラ大佐」
「やー、楽しみですねぇ」
「入ってないから、アンタの子なんて」
「それはそうでしょう。これからおさめるんですから」
「……………」
「ああ、どうせおさめるのなら取り出すのも自分の手で…」
「(ブンブンブンブンッ)」
「そんな全力で首を振り乱して。
 相変わらず謙虚な人ですねぇ。まぁ、遠慮なさらず♥」
「アンタの医学はもっばら死体専門でしょうが!」
「良い勉強になります」
「しなくていい!」





コイツらが『恋』と『変』を見誤ってるんじゃないかと思うのは例えばそうこんな会話だ。

『恋』と『変』を
見誤ってない?


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