「ジェイドのこと嫌いになった?」
「え…?」
「『死んで下さい』」
「…ッ」
「そう、言われたんでしょ」
「うん…」
「ねぇ、ジェイドのこと嫌いになった?」
「……ジェイド、さ」
「うん」
「俺のこと『友人』だって」
「当たり前じゃない」
「へ? じゃあもしかしても俺のこと…その、
 『友人』とか思ってくれてたりする、のか…?」
「あのねぇ。友達でもなければ私もジェイドも、
 こんな手間ばっか掛かる坊やお嬢ちゃん達の『子守り』なんてやってないわよ」
「こ、『子守り』…」
「ルークはジェイドのこと『友人』だって思ってなかったの?」
「そ、そんなことはないけど。
 だってさ、ジェイドって35だし。
 俺なんてまだ17歳…いや、7歳児か。まぁそんなだし」
「あはは、自分で自分のこと7歳児って言ったよこの子」
「笑うなよっ。
 ともかく! その…何つーか、『友人』とか呼ぶのは気安くて憚れるというか…。
 それにどっちかっつーとジェイドは『友達』って言うより『師匠』って感じがするし」
「じゃあ私は?」
「えっと…友達、だったらいいなって…」
「回りくどいわねー」
「う"…」
「まぁ私は勝手にルークは友達だって思ってるからいいけど。
 それなら成立したてほやほやの友達から早速卑屈なルーク君に苦言を呈しましょう」
「は?」
「ルーク。全てを受け入れるなんてこと、しなくていいのよ」
「そ、れは」
「全てに受け入れられようなんてしなくていい」
「でも、でも俺は…」
「『レプリカ』だから?」
「…っ」
「そんなにたくさんの被験者オリジナルに認められたい?」
「! 違う!
 違う、そうじゃないんだ…! そんなん、じゃ…っ」
「私達じゃ駄目なの?」
「…え?」
「私達はルークのことを認めてる。
 受け止めて、受け入れてる。
 それじゃ駄目なの? 私達だけじゃ足りない?」
「そんなことない!」
「じゃあ、どうして?」
「それは…それはきっと、これが…これが俺の生まれた意味だから…」
「本当にそう思ってる?」
「…それ、前にジェイドにも同じこと言われたな。
 レムの塔でかな。
 『ルーク、貴方は本気でそう思ってるんですか?』って」
「どういう意味で訊かれたか判ってる?」
「何と、なく…」
「はぁ…。何となくっていうのは要するにイコール判ってないってことよ。
 …───それがルークの出した答えなのね」
「答えかどうかは判らないけど……そう、決めた」
「そう」
「ごめん」
「どうして謝るのよ」
「俺、ジェイドにもの期待にも応えられてないんだろうなって」
「まったく…何を聞いてるのよこ・の・み・み・は。
 今まさに言ったばっかでしょうが。
 『全てに受け入れられようなんてしなくていい』ってー」
「イテテっ! ご、ごめん!」
「……ルーク、今自分が何のために死のうとしてるのか良く見て。
 自分が誰のために死のうと決めたのか、もう一度良く考えてみて。
 今のルークの考え方は…はっきり言って安易以外の何でもないわ」
「うん…ありがとう、
「本当に欲しいのはそんなお礼の言葉じゃないんだけどね」
「うん」
「もういいわ。私の手には負えないってことが良く判ったから。
 さっさとティアんトコ行ってガツンと凹まされて来なさい」
「はは、そうする」





そうしてルークと2人、頭上から注がれる感じ知ったその視線に気付かぬフリを決め込んだ。
image music:【Deep river】 _ 宇多田ヒカル .

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