「血が繋がってることが親子ってことなのかな?」
「え…?」
「いや、私、養父さんと血が繋がってないから」
「! はお養父様がいらっしゃるの?」
「あはは、人様にはとても見せられないような養父だけどねー」
「ではお養父様に…その、本当の娘ではないことを告げられたのですか?」
「いや、私と養父さん、親子になってまだ2年ちょいだから」
「え?」
「しかも、もう1年ぐらい会ってないから実質親子歴1年とかそんな感じ」
「………」
「フフーン。状況が飲み込めないって顔してる」
「ご、ごめんなさい」
「何で謝るの。いくら何でも気弱になり過ぎ」
「ごめんなさい…」
「ほらまた」
「あ…」
「まあいいけどね。
 そう、私と養父さん。
 出会ったのは2年半ぐらい前でね。
 私が行き倒れ掛かってたところを街医者やってた養父さんが拾ってくれたの」
「行き倒れ? がですか?」
「そ。まぁ"此処"に来た当初は色々とあったのよ。
 拾って貰って、そのまま養父さんの厚意に甘えて療養してる内に、
 何だかんだとノーマルからマニアックまで縦横無尽な知識をお裾分けして貰ってね。
 気付いたらまぁお互い情が湧いちゃって。
 腹括って、一世一代の大告白にも身の上を打ち明けたら、
 『よし、じゃあ今日から僕をパパと呼ぶといい!』って」
「まぁ」
「なもんだから私もつい、
 『ふつつかな娘ですがよろしくお願いしますこのバカ養父』とか言っちゃって」
「ふふっ」
「そんな行き当たりばったり親子です」
「『行き当たりばったり親子』なんて何だか言い得て妙ですわね」
「よね。我ながら、よくもまぁ私みたいなのを娘にしたもんだと思うわ。
 とか言っといてかく言う私も、
 『よくもまぁあんなの養父にしたわ』なんて思ってるぐらいだから、
 きっと向こうも似たようなこと思ってるんだと思う」
はお養父様をとても愛しているのね」
「まぁ一応、ね」
「でもどうして1年も会っていないのです?」
「ジェイドにナンパされてマルクト軍に入ったから」
「ああ」
「一応、時々手紙は送ってるから連絡は取ってるんだけど、
 『軍の狗に成り下がりました』って手紙送った時は凄かったわ」
「? 何が凄かったのです?」
「どっかのロン毛眼鏡博士の研究論文ばりの返事がきたの」
「まぁ!」
「全文読むのに3日も掛かったわよ…。
 しかも中身はといえば『元気かい?』とか『ちゃんと食事は三食とってるか?』とか、
 『どうしてそういう重要なことを養父さんに相談しないんだ!』とか、
 『またどうして軍属なんだ!?』とか『養父さんは反対だぞ!』とか、
 『悪い虫は付いてないか!?』とか、『変な男に引っかかったりしてないか!!?』とか、
 あとはそう『養父さんに会えなくて寂しくないのか養父さんは寂しくて死にそうだ!』とか、
 そんな内容が延々と泥沼リピートで垂れ流し状態にも書き連ねてあってね。
 あまつさえ『なってしまったものは仕様がないから軍服姿の写真を送りなさい!』とか、
 しまいには『むしろ養父さんが義娘の晴れ姿を撮りに行く!』なんて書いてあって。
 『アレ、父親ってこんなにウザイものだったっけ?』って心底ウンザリしたもんだわ」
「ふふ、素敵なお養父様ですわね。
 娘のことをとても愛していらっしゃるもの」
「愛してりゃ何でも許されるってわけじゃないけどね」
「それで、はその手紙に何て返信したんですの?」
「『勝手にグランコクマまで会いになんて来たりしたらもう一生口利かない』って」
「あら」
「あと『養父さんの可愛い義娘だから旅してます。
 終わったらちゃんと養父さんの所に帰るので大人しく待ってて下さい』だったかな」
「………」
「私にとって、"親"は養父さん一人だとは思ってる。
 ───私が"『子』として、『父親』と呼んで慕った"のは養父さんだけだから」
「あ…」
「それがたとえ1年とちょっとっていう短い時間でもね」
「…ええ、判ります」
「逆に、実の両親とは親子らしい真似なんてした覚えがなくてね。
 私にとって実の両親は、
 父親という名の役割を負った男と、母親という役目を果たした女でしかなかったから。
 勿論『父さん』『母さん』って呼んではいたけど、
 それはただの呼称、記号でしかなかった。
 互いにそれが当たり前のように無関心で、何も期待し合わなかったからかな。
 ただ血が繋がってるだけの他人の集まりだった」
「………」
「ま、これは私の場合だけどね。
 こういう事例もあるってこと」
「……いいえ、ありがとう
 御両親のことを、素敵なお養父様のことを話してくれて」
「素敵かは甚だ疑問だけど、どういたしまして。
 そうそう、この話は皆…特にジェイドには内緒ね?」
「あらどうしてですの?」
「色々と理由はあるんだけど…まぁ1番の理由は恥ずかしい養父だからかな」
「ふふ、『恥ずかしい』ではなく『照れくさい』からではなくって?」
「む…そうきたか」
「違いまして?」
「さあどうかしらねぇ?
 ま、とにもかくにもここは女同士の約束ってことでひとつ」
「ええ、女同士の約束です」
「「ゆびきった」」
オリジも甚だしい養父を登場させてみました。
養父はトリップして来たばかりのヒロインを拾って娘にしちゃった大物。
色々と設定は決まってるんですが…まぁウッカリ連載とか書く気になったら、
きちんとまとめて載せたいなぁなんて思ってます。

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