「私は止めないわ」


ズキリ、と。
音を立てたのは、痛んだのは胸の中心。
そしてそれはたぶんレプリカの俺の、唯一の持ち物である"心"。


「私は自分がパッセージリングを起動して、自分が病んでいくのを受け入れようと決めた。
 貴方もそれを許してくれた。
 貴方が決心したというならそれだけの考えがあってのことだと思うわ」


泣いてくれるんじゃないかって。
この身体のどこかが勝手に期待していた。
ああ俺は本当に何にも成長しちゃいない。
アクゼリュスを魔界に落とした甘ちゃんのままだ。
自分のことしか考えてない、周りが見えない馬鹿のままなんだ。


「だから私も…貴方を許す」


ティアは泣いたりしない。
ティアは俺と違う。
ティアは強いから。
いや、強がりが上手いのか。
ティアは優しいから、いつだって誰かのために無理して強がる。
今だってこうして俺のために無理して強がってくれてるんだ。


「でも、貴方のすることを認めた訳じゃない」


だから。
だからさ。
俺がいなくなった後はどうか少しだけ、
ほんの少しだけでいいから強がりが下手になって欲しい。
俺はもういなくなったんだって、その事を少しだけ寂しく感じてくれたらいい。


「貴方がその選択をしてそして障気が消えたとしても…私は貴方を憎むわ。
 みんなが貴方を賛美しても私は認めないから」
「…うん、ありがとなティア」


屈折した物の感じ方かもしれないけれど。
ただ悲劇的な道筋に浸って酔い痴れているだけなのかもしれないけど。

けれど、どれでも。





「───…ばか」





ティアが悲しんでくれるのなら俺は。
恐くても逃げ出さずに、またたくさんの罪の無い人達を犠牲にすることができるから。

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