「諦めろ、恋人」


その男は、普段の食えない笑みに絶妙な匙加減で男の表情をまじらせそう言った。


「何かもうどうでもよくなってきたな…」
「おいおい。
 そんなこと言うと、どうされるか判らないぞ」
「いいさ。どうにでもするといい」
「………さしもの俺でもさすがに傷付くんだがな」
「? 何がだ」
「まるで諦められてるみてえじゃねェか」
「そんな風に聞こえたか?」
「聞こえた」
「どの辺りが」
「男口調をやめねェ辺りとかな」
「…ああ。」
「おい」
「『どうでもいい』ではなくて、『どうされてもいい』と言ったつもりだったのだけれど」
「───…」
「紺?」
「ああ、クソ…ッ。
 諦めてやるよ、諦めてやるさチクショウ!」
「何故に逆ギレ」


諦めろ、恋人。