「ほーら、大丈夫だったでしょ?」
「っ馬鹿言っちゃいけません!!」


お決まりの台詞をわめいてオーレルは、もの凄い剣幕で迫ってきた。


「コレのどこをどう見て大丈夫と言うんですか貴女は!」
「オーレル、近い」
「ちちち血が出て、出てるじゃないですかしし止血を、止血が、止血に…!」
「いや、落ち着いて」


こうして胸倉を捕まれゆっさゆっさがっくがっくと揺さぶられる理由はと言えば、
至極単純明快且つ、特に理解し易くも納得し難いものだった。

具体的に言うと、大分ありきたりになってしまうのが惜しい。
アレスパから機械遺跡への道すがら、要するに鋼の峡谷。
集団で敵の接近を許したのはやはり護衛役をかって出た私の油断だ。
だからこそオーレルへと敵の注意が向かないようにと、
先手必勝とばかりに派手に敵の群れへ飛び込んだ。
なぜならオーレルは一度敵に見つかってしまえば自力で逃げることすらまず能わない。
それほどに戦力外だからだ。
「ちょっくら行ってきまーす」。
崖を蹴って飛び込んだ瞬間、背後から湧いたオーレルの声にならない悲鳴を思い出して、
思わず緩みかけた口元を何とか根性で抑え込んだ。


「うーん…」
「聞いてるんですか!?」
「ねぇ、オーレル」
「だから…」
「私って素敵?」
「…は、はぁ?」
「素敵?」
「そ、そりゃあ素敵といえば素敵ですが…───って何を言わせるんですか!!」
「じゃあ私ってそんじょそこらの敵相手じゃ手足も出ないぐらい無敵?」
「だから一体何だって言うんです!?」
「回答拒否は肯定と看做します」


ずずいっと顔を寄せる。
それこそ互いの鼻の頭が呼吸一つで微かに触れ合うぐらいの位置に。
アウっと唸って一歩引こうとしたその腕を掴む。
逃がさない。
ぐっとキツク眉根の寄せられたその赤い顔。
それにニッコリと笑ってみせて。


「素敵に無敵、何の問題が?」
「……問題ありまくりなのですーーー!!」


素敵に無敵、
何の問題が?