「何故、貴女は僕の研究を手伝ってくれるのですか?」


問えば彼女は、きょとんとした表情を作ってこちらを振り向いた。


「どうしてって…そりゃ友達だし」
「友達だから、ですか」
「友達よ。少なくとも私はそう思ってるけど」


オーレルは違うの?と。
敢えて言葉にはせず、片眉を綺麗に跳ね上げて問うてくる彼女。
それに自分も敢えて言葉にはせず、首を左右に振ってみせた。
彼女は満足そうに笑って遺跡に仕掛けを調べ始めた。


「貴女曰く、キサナ様、リゼルドさん、ユヅキさん、
 ピアや僕といった『白夜』の皆さんは友達でしたね」
「うんうん」
「そしてあのロクデナシ2人も」
「そうよー」


肯定に躊躇いも無い。

彼女はキサナ様も含めた僕ら白夜の人間達を友達だという。
そして白夜の天敵とも言える悪名高き2人組までも友達だと言って笑うのだ。


「私は『放浪者』だもの」


彼女は『白夜』ではない。
僕らが『白夜』に入ることを勧めると彼女は、
決まって「アタシは『放浪者』の方が向いてるから」とけらけら笑って断るのだ。
けれどベクサー達の仲間というわけでもない。
誰に、何に属するでもなく。
ひとつところにとどまらない。
自らの意思でもって行動し、新たな可能性を求め続ける者。
そう、あくまで彼女は一人の『放浪者』。
それ以上でも以下でもないというのだ。


「あと…」
「あと?」
「オーレルが好きだから」
「は?」
「ま、要するに愛しちゃってるワケよ」
「───は、はァ!!?」
「おっと」


さぁて魔物さんが雁首揃えてお出ましね、と。
オーレルはせいぜいそこで悩んでなさーい、と。
愛用の魔銃を両手に構えて彼女は、黒いコートを翻し楽しげに魔物の群れへと踊り入った。


要するに 
愛しちゃってる 
ワケよ。