「イイ男、イイ女ねぇ」
「はァ?」


言えば、オーレル曰くの『品性のカケラもない中年男』は、
悪態と大差無い相槌を打った。


「アンタ達のコト」
「『アンタ達』ってーと…」
「そ。ベクサーとリニア」
「はァ?」
「だってベクサーは男前だし、リニアは美人だし。
 まさにイイ男・イイ女じゃない?」


ねぇ?と。
同意を求めれば、男の眉間の皺の数が増える。
見遣れば、こちらも曰くの『愛想のカケラもない眼鏡の女』も僅かに眉を潜めていた。
まるで「不快」と言わんばかりに。
ベクサーもリニアも不器用な。
どうしたって拭えない微笑ましさをどうにかこうにか噛み殺せば、
ベクサーがむっつりと口を"へ"の字に曲げ、リニアには無言で銃を構えられた。
やれやれ、相変わらず物騒な照れ隠しだこと。


「お前な…」
「冗談ぶっこいてんじゃねェ、ですね」
「そう、それだ。
 お前もたまにゃ気の利いたコト言えるんじゃねェか」
「バカなマスターの足りていない知能を補うのが私の役目ですから」
「………」
「いやぁ、本当にイイカップルだわ」
「ドコがだ、ドコが!!」


これだから2人に絡むのはやめられない。
言えば当の2人は「撃ちますが」「撃ったれ!」とナイスカップルっぷりを披露してくれた。


イイ男、イイ女。