さんってコッチでは医者をやってるんだよね。凄いよなぁ」
「いや、厳密に言えば私は薬剤師であって医師ではないな」
「? 何か違うの?」
「確かにこの時代、薬師といえばイコール医者ではあるが…」
「医師が処方する薬を作るのが薬剤師、つったら解り易いか?」
「ああ、成る程」
「この時代、医学つっても当然外科手術なんて技術はまだ無ぇからな。
 医者の仕事といえば患者の容態を見て薬を出すことだろ。
 コイツはその医者が処方する薬を調達したり調合したりしてんだよ」
「趣味の薬学がこんな形で役に立つとは思わなかったが…、
 生薬を採取したり、栽培したりして慎ましく生計を立ててるよ」
「へぇ…、紺もさんも凄いよな。ちゃんと生活してんだもん…」
「お、何か急に凹んだぞ」
「それに比べて、俺…」
「此処は現代と違って仕事には事欠かない。
 歩けば仕事を拾えるからな。
 篠ノ女のような散財家でも路頭に朽ちないぐらいだ」
「放っとけ。
 けどな、鴇。そうは言いつつもコイツ、副業の方が稼ぎいいんだぜ?」
「『副業』?」
「そうだ。コイツの副収入は【指し屋】でな。
 将棋や囲碁で近所の御老体達やお偉方さんから結構な額を巻き上げてんだよ」
「『巻き上げて』いる?
 失敬なことを言うな。
 双方合意の上で支払われる正当な手合い料だ。
 相手方だけでなく私も同条件の下で行ってる」
「相手によっちゃ下手な博打より儲けが付くだろうが。
 負け知らずの『先生』さんよ」
「あ、それでさんって町の人達から『先生』って呼ばれてるのか」
「まぁそれだけじゃないんだがな。
 この時代、僧でもなけりゃ薬師はそれなりの社会的身分で認知されてんだよ」
「薬は軍事物資でもあるからな」
「しかもコイツはこういうキャラだろう?
 相手が善良ならタダ同然で出すし、ツケも利く。
 相手が悪党なら足下見てふんだくれるだけふんだくる。
 これが端からすれば『粋』ってヤツに分類されるんだな。
 なもんだから、お前と同じでマゲも無いってのにもてはやされてるってわけだ」
「ほへー」
「お前も人ん家入り浸ってばっかいねぇで、
 さっさと稼ぎ口見つけて来いよ。もやしっ子」
「も、もやしって何だよ!」
「ふむ。確かにこの肉付きだと紺のような肉体労働系は無理そうだな」
「ぎゃー! なに着物めくってんのさん!」
「おい、大声出すなら『』の方にしとけよ」
「一応私達は3人共『同郷』という事になっているからな」
「ああもう何をどこからツッコめばいいのやら!!」
「まぁ働き口も含めてゆっくり考えるといい、典型的現代っ子」
「そうだな。しばらくは俺らが面倒看てやるからしっかり考えな、もやっし子」
「うわーん! 朽葉ー!!」


このツッコミ 
症候群患者めが。