「彼女は万華鏡のような女性ひとですね」


その心は、まるで万華鏡のよう。
覗き込めば垣間見ゆ、きらきらと煌めく眩き鮮やかな色彩。
それはまさに普段から惜し気なく周囲に披露してみせる彼女の豊かな感情、表情。
しかし裏を返せばそれは、鏡という壁を張り巡らせ築いた虚映の絵。
本心を覆い隠すために張り巡らされた美しい幻影。
まるで、滅多なことでは本心を見せない彼女そのもの。


『私はこの世で絶対の孤独者。
 それでも…心を殺してでも【この想い】だけは、必ず───』


きらきらと煌めく眩き鮮やかな色彩。
それは本映であり、また虚像でもある。
そして虚像であり、また本映でもある。


「…ちょっと綺麗なモノに例え過ぎじゃないか?」
「そうですか?」


回せば、二度として同じ絵を見せないそれ。





「『見えないからこそ真実』。
 まさに彼女そのものを体現しているようではありませんか」





その誰の手も届く事の無い閉じられた煌めきの孤独は、まるで彼女のように。


心を殺しても、
想いは生かそう。



『万華鏡? …ああ。
 触れようと境界を越えたが最後、
 跡形も無く粉々に崩れて消え去るその脆弱さはまるで私のよう?』