「没収」


背後から伸びてきた白い手に、
ブックマンと揃いであるのが不本意なそれをひょいと取り上げられた。


「若い内から嗜んでると、男ぶりが落ちるわよ」


言って、取り上げたそれをそのまま口へと運び、
口元に薄い笑みを浮かべて紫煙を吐き出したのは他に誰がいようか、だ。
うっわー、すっげぇサマんなってる。
何がどうしてイイ女じゃん。
俺、以上に煙草の似合う女って知らねェ。
内心盛大にノロケつつ「返せよー」と見惚れまぎれにも見上げれば、
「反省は?」とささやかで楽しげな叱責が降ってきた。


「反省」


どこぞの猿のポーズで返す。
すると「眼帯の小猿ちゃんなんて可愛くて食べちゃいたくなるわね」と、
はやっぱり笑って煙を吐き出した。


「ほい、返して」
「間接キス狙い?」
「あたぼォ」
「今更ねぇ」
「今更だからこそ初心に、ってね」
「あら、言うようになったわね」
「へへっ」


は基本的に『放任主義』だ。
自分で責任をとれる範囲にあるのなら、
他人に迷惑掛けようが、何でも好きなだけやればいいと言う。
煙草も吸いたきゃ吸えばいい。
早死にするのは自分なのだから。
ただしリナリーの前では厳禁、とのことで。

要するに形ばかりの説教なのだ、これは。


だって吸ってたんじゃん、若い内から」
「一桁の頃からね」
「………負けました」
「負けでいいのよ、そんなもの」





まぁ、に関しては何もかんも負けでもいいやとか思ってるけど。
言えばご褒美とばかりに寄越されたキスはいつも通り甘くて、いつもより少しだけ苦かった。


間接も何も、
キスじゃないの?



理想は格好良いラビなんですがー…、何でかなぁ、可愛いラビになってまう罠。
というか技量の無さ。

image music:【Brozilion Anthem】_ TOMOSUKE.