正しく飾られた
世界で


「らしくないわね」


一人の女子生徒が突然クラスから消えた。
それはもう文字通り『跡形も無く』。
理由は知ってる。
あの、雨の日。
喜助さんと拾いに行ったから。

言葉通り『死に損ねた』一護を。


「一護」
「何だよ」
「こっち向いて、一護」
「…無理だ」
「一護」


一護は織姫の言葉に迷いを生じてしまった。
それは織姫の笑顔でも拭い切れるものではなく。
だからこそこうして一護は、私の方を見ようとしない。


「ねぇ、一護はどうしたい?」


消えた、ルキア。
大好きな、ルキア。

ルキアは大切な友達。
これは嘘でも正当化でも何でもない。
事実、そのもの。
二ヶ月という、命を掛けるには少々足りないかもしれない短い期間だったけれど、
それでも友人の中でも更に"大切"と、そう呼ぶに足りる付き合いだったと私は思うから。


「───俺は、ルキアを助けたい」


助けたい。
正直にそう思う。


「単純」
「…悪かったな」
「単純なくせに昔から変なところで頭固いわよね、一護って」


それぐらいにルキアのことが、好き。
けれど。





「───…"助けに"行く必要なんて無いわよ」





私はルキア以上に、一護のことが好きだから。





「ルキアに"会いに"行こう」





だから、私は。
こうして笑って一護の背中を押す。





「別に助けに行く必要なんてない。
 ただ"会いに行って"、それでルキアがこっちに居たいって言ったら、
 そのまま連れて帰ってくればいい」
「───…」
「大丈夫。私も手伝ってあげるから」


幼い頃からの笑い方で、一護の決意を促す。


「手伝うってお前…」
「あら、こう見えても私かなり強くなったのよー?
 喜助さんの所できちんと鬼道やら何やらの講習を終えてるんだから」
「はぁ!? おまっ、いつそんな…」
「実力の程はといえば、喜助さんとテッサイさんのお墨付き♥」


これを我慢というのなら。
私は抑え、耐え忍ぼう。
君のために、痛みごとこの心を抱き込み、その奥深くへと沈めよう。


「喜助さんったら激スパルタよ。それこそ文字通りの"命懸け"」
「………マジかよ」
「大マジ。私も何度死にかけたことか…」


君のため、心殺めて私は笑おう。


「行こう、一護。
 ルキアに会いに」


そして君に、勇気を。


「───おう!」


君に、笑顔を。


「そうそう、それでこそ一護」





そうして私は、笑って想いに殉じよう。





「…やっぱ、お前だよな」
「何が?」
「お前が最高の相棒だってこと」


大好きよ、一護。


「当然よ」
「だな」


けれど聞こえぬよう。
決して届かぬよう。

それでも、この想いが乾き消えてなどしまわぬように。





「これからもよろしく頼むぜ、相棒」
「まぁ任せといて」





殺めた心に涙流させ。
笑って君と、これからも共に歩もう。



『一護悲恋』とのリクエストより。
悲恋とかあまり書かないんですけど、こういう詩的なのは書いてて楽しいです。