30.


泣かないで。


泣かないで、
僕は君が泣くことが何よりも辛い。

だからどうか、悲しまないで。



ほら、見えるだろう。
君の頭上に広がる蒼。
始まりも終わりもない透き通る世界。


そう、君の居るべき世界だ。
水が在り、風が在り、光が在り。
君を彩る美しい世界。


水が君の赤い唇を潤わせ。
風が君の白い頬を撫で。
光が君の漆黒の髪を輝きなびかせる。
尊く、愛おしい世界。



だから、泣かないで。





───たとえそれが僕の無い世界でも。










愛しい君。
最愛の君。

僕がそうであったように、君ならばまた誰かに求められるはず。
求められ、必要とされ。
そして愛されるはず。
もし君がその誰かを愛する日が来た時は、どうか幸せに。










ただ僕を想う夜があれば夢の中で、泣いて。


ついに行く道

泣かないで、祈るからこそ泣いて

君が僕の居ない世界を手放すのは、夢見て眠る夜だけだから。

【30】ついに行く道『死に別れること』 _ 配布元:やまとことばで38のお題サマ