36.
朝なんて来なければいい。
目なんて覚めなければいい。
このまま時なんて凍り付いてしまえ。
ああ、世界なんて終わってしまえばいい。
「私は…っ」
終わってしまえ、世界など。
でなければせめて私の世界だけでも終わってしまえばいい。
そうすれば太陽は昇らず月が沈むこともない。
もう朝を待ち望む必要も無く、夜に怯える必要も無い。
「私は喜助が迎えに来てくれたから、
『アタシの傍に居て欲しい』って言うから死神になった…ッ」
終わってしまえばいい。
世界も私も、終わってしまえばいい。
「───…すいません。身勝手な男ですね、アタシは」
終わって、しまえ。
「どうして…、どうしてよ!?
夜一は連れて行って、どうして私を連れて行ってくれないの!?」
「それはサンがアタシにとって1番大切な人だからですよン」
「夜一は私の次に大事だって言った!」
「ええ」
「だったら…っ」
「連れては行けません」
大切なら連れて行って。
遠ざけたりしないで。
離さないで。
傍に置いて。
「───…そう、判ったわ」
私を、独りにしないで。
「サン…」
「行かせない」
「刀をしまって」
「抵抗するつもりがあるのなら刀を抜きなさい、"元"十二番隊長浦原喜助。
追放処分を待たずに逃走しようとする意志は明白。
現時をもって、即時処分に附します。
必要と判断すれば実力行使も辞しません…覚悟なさい」
ああ、こんな風にこの男へ刀を突き付けるために死神になったわけじゃないのに。
卍解を習得したのだってこの男の隣に誰よりも長く居たかったからであって、
この男の前に立ちはだかるためじゃなかったのに。
「サン。アタシに貴女を傷付けさせないで下さい」
「なら無抵抗にも私に殺されればいい」
「サン」
夜一が羨ましい。
私は浅ましい。
喜助はきっと正しい。
「今目の前に居るのはアンタのじゃない。
十二番隊副隊長のよ」
いつか私の事で困らせて、本気で弱った喜助の顔を見たいと思ってた。
まさかそんな顔をするなんて思わなかったから。
胸の底が痛い。
けれど。
それでも。
「───さあ、私の屍を越えて行って」
喜助が私を絶やしてくれなければ、私は耐え切れずに世界を終わらせてしまうから。
夢の浮橋
耐えることができぬから、貴方の手で絶えることを望む
喜助さんが現世に行っちゃう、というコトでそんな感じの夢を。(まんまやね)
一応、尸魂界ヒロイン・プロトタイプ夢『繋がぬ駒』の続き。
【36】夢の浮橋『いっそのこと、中絶えよ』 _ 配布元:
やまとことばで38のお題サマ