僕は独りきりで逝くけれど。
どうか君の心は連れて逝かせて。


流れいく 
心の底に


「───…





愛しい人。
僕にとって唯一人の君。





もう、その声が聞けないのだと。
もう、その笑顔に触れることができないのだと。
そう思うと気が狂いそうになるけれど。
狂ったところでもはや何になるわけでもないと知っているから。
僕は今、こうしてひたすらに冷静でいられる。





───君のことだけを考えることができる。







本当は、これからも君と共に居たかった。
君と二人、誰よりも傍にと願ったのだから。
君と二人、誰よりも傍にと誓ったのだから。


けれど。
すまない。


誰よりも傍にと願ったけれど。
誰よりも傍にと誓ったけれど。





僕は独りきり、君を置いて逝かなければならなくなってしまった。





愛しい、君。
君は泣いてくれるだろうか。
それとも涙は流さず、声も上げず、
ただひたすらにその心を軋ませ悲しんでくれるだろうか。


けれど。
どちらにせよ僕はもう。
君の涙を拭う指先も、その細い身体を抱き寄せる腕も失くしてしまったから。





君のことを考える以外、もう何もできはしないから。





だから、僕は。
ただ、君だけを想う。





愛しい、唯一人の君。

僕が想うのは本当に君だけだから。
僕には君だけだから。
君にも僕だけであって欲しいと思わずにはいられないんだ。


これが僕のエゴであることは判ってる。
罪悪感だって押し潰されそうな程に、ある。
けれど願わずにはいられない。
祈らずにはいられないんだ。


願わくは。
僕にとって君が唯一の存在であるように、
君にとっても僕が唯一人の存在であるように、と。


共に過ごした今までも。
こうして独り死に逝くこの瞬間にも。





───そして、僕の存在しない君の未来においても。





たとえ、それがこの先君を永遠に束縛することになっても。
君の幸福な未来を奪うことになっても。
君からその笑顔を奪うことになったとしても。





僕はやはり、君を想う。
君だけであることを、僕だけであることを。





流れ逝く心の底から、祈る。





君はこんな僕を笑うかな?
それとも責めるかな。
でなければ浅ましい男と、嘲笑うだろうか。


それでも、良いんだ。


たとえそれがどんな形であっても。
何を犠牲にしても、君の中に残りたい。
少しぐらいなら欠けても構わないよ。
だからその代わり、永遠に消えることない鮮明さでもって。
僕を君の中へと存在させて。





どうか僕を、君の中に。
どうか君よ、僕の中へ。










───ああ僕は、死んだこれからも君を失いたくないんだ















…───」





最愛の君。










僕は独りきりで逝くけれど。
どうか君の心は連れて逝かせて。










流れ逝くこの心の底から、僕は君を想う。



藍染さんの一人称。
あの誰よりも優しい藍染さんがこんな退廃的な事を考えるかと聞かれれば、
それは正直どうなんだろうと自分でも思うわけですが。
けれど藍染は聖人君子でもなく。
ただの一人の男であり、そして彼女が「それが他ならぬたった一人の君」ならば、と。
そういう解釈もありかなと思うわけで。