01.
「退いてくれと、言っても君は聞いてくれないのだろうね」
「引き返してと言っても、貴方は聞いて下さらないのでしょう」
「ああ」
真実を知ったというのに、君は僕に聞かなかった。
今までの全ては偽りだったのかと。
囁いた愛の全ては嘘紛い物であったのかと、問い詰めたりしなかった。
「君には嘘を吐いたところで徒労というものなのだろうから本当の事を告げるよ」
それは。
「───僕は君を愛していた、本当に」
君が、君だけが僕の本質を理解していてくれたから。
「今もそれに変わりはない」
「…はい」
「僕は君を傷付けたくはない」
「判っています」
「そうか…ありがとう」
虚像も本質も、君は"僕"を愛してくれた。
「君に会えて良かった」
だから君には真実を。
「さようなら、」
最後の口付けを。
「…私も貴方のことを本当に愛していました」
「ああ」
「今もそれに変わりはありません」
「良かった」
「私は貴方を傷付けたくはない」
「けれど君はもう決めているのだろう?
僕がそうであるように」
「はい」
愛しい君に別れを。
「───貴方を止めます」
そして君に刃を。
どうしようもなく
きみが好き