「そうね…確かに私は室長でも何でもないのだもの。
 非人道的であろうが何であろうが、
 貴方達のやり方に口を出すのは逸脱行為、不粋も極みよね」


口調こそ穏やかなそれ。
穏やかで、とくとくと。
まるで聖書を読み聞かせる尼僧の如き敬虔な声色が、淀みなく言葉を連ねていく。
女の放つ雰囲気に呑まれた面々の頭上に審問が静かに注がれる。


「それに私にも非がありますものね。
 いくら御上のジジィ共のラブコールが鬱陶しいからといって、
 こんなふざけたやり方が罷り通ってるとも知らず、
 師匠の二番煎じにものうのうと行方を暗ましていたのですもの。
 適合者の親類というだけで幼い子供達が拉致られ、監禁され、
 あまつさえ人体実験に供されていたというのに、
 私は同じ集団に属しながら、同じ塔に居ながら、それを通り過ぎていたのだから」


少なくとも私は私を許すつもりはありませんわ。
形の良い、艶やかな薔薇色の唇が薄い笑みを浮かべる。





「───これはもう新しい室長を立てるぐらいしないと贖えないかしら」





艶を消した漆黒の双瞳には、純然過ぎる断罪の色を浮かべていた。


垣間見た殺意

救えぬのならば、人も己も世界も神も全てに等しく断罪を

title20 変わり種 No.02 ー 祈りの届かぬ神へ