「知っているか、?」
「何をでしょうか、クロス師匠?」
「俺達は近頃、"上"で『不良師弟』と専らの評判らしい」
「まぁ、所謂『目の上の瘤』というやつですね?」
「その通りだ」
「東洋の訓戒とはお前は実に勤勉だ。そして応用も利く。
俺はお前のような弟子を持てたことを誇りに思うぞ」
「そのようなお褒めの言葉、未熟な我が身には不相応、恐縮も至りです。
しかし尊敬してやまない貴方が手放しにもそう仰って下さるのならば、
私は尊敬する貴方のその言葉をそのまま我が生涯の誇りにしようと思います」
「やはりお前は私の誇りだ、。
その真面目で謙虚な姿勢と真っ直ぐな向上心をもってこれからも修行に励んでくれ」
「はい、心得ております、クロス師匠」
「けれど、なるほど。
最近頓に周囲から貴方の弟子であることを哀れまれるのはそういう理由でしたのね」
「ほう、哀れまれているのか、お前は」
「ええ、それはもう。
『あの人が師匠ではさぞや苦労しているのだろうな』とか、
『お前もまた変な男を師に持っちまったな』とか、
ああ、あと『クロス師匠に比べればウチの師匠もまだマシだよな』など色々と」
「そうか。それはまた何とも愉快なことだ。
そうだな、今まで投げ掛けられた哀れみの言葉を全て発言者と共に明らかにしろとは言わん。
今挙げた3つの哀れみの発言者の名前を言ってみろ。
次に黒の塔へと戻る際には、お前に如何んともしがたい面白い光景を見せてやろう」
「あら、それは心底楽しみなものですね。
しかしわざわざ私が彼らの名前を唇でなぞらずとも、
貴方は既にそれらが各々誰の言であるかなんて判ってらっしゃるのでしょう?」
「まぁな」
「では私は、彼らの健やかな生涯を祈って口を閉ざすことに致しましょう」
「心優しき愛弟子よ。
お前はやはり私の誇りだ、」
「ならば貴方はやはり私の誇りです、クロス師匠」
「時に」
「はい、何でしょうかクロス師匠」
「いい加減、その敬虔ぶった口調はよしたらどうだ?
虫酸が走って、さしもの俺もそろそろ限界だ」
「あら、貴方にそうして嫌がって頂けるなんて更にやめる気が失せましたわ」
「お前がそうして毎度無駄に愉快な趣向を凝らすから、
俺までもが"上"から『不良』とのラベリングを受けるのだ」
「まぁ、過失割合はどう考えたって8:2…いえ、7:3でしょう。
ですのに一方的にも責任転嫁どころか転換ですか、我が師よ」
「それにこういうものは、病める時も健やかなる時も共に分かち合ってこそでしょう?」
「俺らは夫婦か何かか」
「もし私達が師弟以外に夫婦か何かの関係を持っていたら、
貴方は『不良』以外に『ロリコン』のレッテルをも得られることになりますね」
「………」
「………」
「あー…、確かに馬鹿師匠との不毛な漫才にもそろそろ飽きてきましたね」
「珍しく気が合うな。
俺も馬鹿弟子との不毛過ぎる掛け合いにはうんざりしきってたところだ」
「師匠、何体倒しましたー?」
「いちいち数えているか、阿呆が」
「私が67体で、師匠は54体ですよ。あ、今ので55体目。
ついでにレベル内訳も聞いときます?」
「いいや。聞くだけ腹が減るだけだ」
「ご尤も」
「それじゃとりあえずあの頭らしいレベル5のアクマ、どっちが?」
「お前やれ」
「やだ、こんな可憐な少女にあんなゴッツイのと戦えっていうんですか?」
「そうだ。修行しろ馬鹿弟子」
「アンタが面倒なだけでしょうが」
「何が悪い」
「この怠惰大魔人ったら開き直りやがったわね」
「とっとと行け、不良弟子」
「自分は高い棚の上か、この甲斐性無しの不良師匠」
若かりし頃の二人。
アクマとバトりながら漫才で退屈さを紛らわす師弟。
一旦英語で考えたのを直訳した感じの日本語にすると二人のような会話になります(笑)
image music:【Tokyo Traffic Report】_ ナメカワキミヲとザ・ハイターズ.