私と彼の
生きる道


さっき、ちょっと素敵な夢をみたの。


「へぇ、僕の夢?」


馬鹿。
でも…そうね、あながち外れってわけでもないかしら。


「おや。一体どんな夢をみたんだい?」


私が片田舎の古びた教会の修道女で、コムイがその近所にあるお店のコックなの。


「僕がコック?
 何だか想像を絶するね」


まったくね。
マッドサイエンティストの作る料理なんて全力で願い下げだわ。
こっそりどころか堂々と試薬実験していそうだもの。


「はは、失敬だね。それで?」


ふふ、私が買い物をして教会に戻るその帰り道にコムイがコックをしてるお店があってね。
パンや林檎が入った茶色の紙袋を抱えた私が店の前を通ると、
カランって鐘独特の音を立てて、お店の入り口のドアが開くの。
そこからひょっこりとコムイが顔を出してね、言うのよ。
『こんにちは、シスター』って。
私はそれに『ごきげんよう、コックさん』って答えるの。
そうするとコムイが『美味しそうな林檎ですね』って紙袋の中の林檎を指さすから、
『貴方の作る料理の方がずっと美味しそうだわ』と告げて私は笑うの。
とんでもない話よね。
超絶料理下手のコムイの料理を、私は『美味しそう』だなんて言って笑ってるのよ?
しかも、それに続くコムイの台詞がまたとんでもないの。


「あんまり下手な事を言ってくれてないといいなぁ、コックな僕」


ふふ、それは残念ね。

『それじゃあ僕が毎日君のために朝食を作りましょう。
 朝食の次は昼食、昼食の次はお茶とお菓子を、お茶とお菓子の後には夕食を。
 この手と心を尽くして、君のために僕は日々美味しい料理を作りましょう』。


「うわ、まるでプロポーズ!」


ここまでは前振り。
本番はここからよ。

『だからどうか、君の名前を教えて下さい。
 そして君が家族と共有している方の大切な名前が、
 僕が家族と共有しているそれに置き変わることを許して下さい』ですって。


「…判ったよ、


何が?


「君がそんな夢をみた原因」


…欲求不満だとか言ったら殴るわよ?


「あはは、言わないよ。
 だってそんな事言ったら毎晩君の夢をみようと頑張ってる僕なんか、
 まるで欲求不満の固まり、変態さんじゃないか」


変態じゃなくて変人ね。
あと狂人。
それで、私がこんな夢を見た原因ってのは何なの?


「ふっふっふ、それはねー」


…何か、あんまりいい予感がしないわね。





「それはきっと、横で眠ってる君のこめかみに、
 『ねぇ、。毎朝僕に美味しいお味噌汁を作って』って、
 僕がこっそり囁いて、インプリンティングついでにキスしたからだよ」





…ちなみに。
コックなコムイのプロポーズに、私は何て答えたと思う?


「ん?
 うーん、どうだろう……何て答えたんだい?」


『それでは手始めに、
 この美味しそうな林檎で私に美味しいアップルパイを焼いて下さいますか?』


「それでコックな僕の回答は?」


『君が食べてくれるのなら、喜んで!』ですって。


「すると僕は、君に毎朝美味しい味噌汁を作って貰えるわけだね?」





───そうね、コムイが喜んで食べてくれるのならね?



あとアレですよね、『僕のパンツを洗って』(笑)

このSSは、拍手でコムイのイメージ曲に『夜』を紹介して頂いて、
久々に『少年アリス』を聞いてふと思い付いた夢です。
いやはや、イメージ曲を紹介して貰えるのはホント嬉しいっス。
音楽好きなんで、教えて貰った曲は片っ端からTSUTAYA行って借りて来て聞いてます。
っていうか、コムイ兄さんのイメージ曲教えて下さる方が多くてウハウハです(笑)

image music:【うちゅうひこうしのうた】_ 坂本真綾.