水映し
「───また性懲りも無く雲隠れ?」
「相変わらずね」
「お前もな」
「性懲りも無く弟妹共の世話を焼いてるようだな」
「ええ、もう趣味みたいなものだから。
それに皆本当に可愛くって。
可愛げの無い師匠なんかよりもずっと世話の焼き甲斐があるってもんだわ」
「それは結構な事だ」
「じゃあな」
「たまには連絡頂戴」
「ああ」
「そんな事言って、手紙の一つも寄越さないくせに」
「ああ」
「ろくでなし」
「ああ」
「人でなし」
「ああ」
「甲斐性無し」
「相変わらず語彙の増えない馬鹿弟子だな」
「何たって『ああ』の2文字でしか弟子を労らない馬鹿師匠の弟子だもの」
「消息不明も程々にしないと失踪宣告すっ飛ばして死亡届提出されるわよ」
「願ったり叶ったりだな」
「私を未亡人か何かにでもする気?」
「今も似たようなものだろう」
「自覚有りか、このダメ男は…」
「───…たまには帰って来てよね」
「"教団に"じゃなくて、"私の所に"」
「…考えておく」
「私が寂しさで死んでしまう前にしてよ」
「今すぐ兎に手を付いて謝るんだな」
「そっちこそ今すぐ私に手を付いて謝れ」
「行ってくるぞ」
「行ってらっしゃい」
『クロス師匠との恋人夢は書かないのですか?』とのお声を頂いたので書いてみたり。
いや、古代植物界百科に吸血鬼の資料を挟んであったのはクロス師匠の仕業じゃないかなぁと。