ソファ・ 
サービス


、早い」
「速読の鍛錬とでも思いなさい」


腕の中には愛しい体温。
俺の胸に背と重心を預けて分厚い本を抱えた
長くしなやかな指先がペラペラとページを捲る。
そう、"ペラリペラリ"ではなく"ペラペラ"と。
早い。
とにかく早い。
俺が半分も読み終わらない内に次々とぺージは捲られる。
軽く俺の4倍のスピード。
エトルリア語もラテン語と関わる前の代物で書かれたそれは、
所謂"難解"という形容詞で括られる分類に属するもののはずなのだが。


「つーかさ、朝っぱらから彼氏背凭れにベッドで読書ってどーなんさ…」


それ以前に、はその筋の人間でもないのに、
どうしてこんな本職も手こずるような言語にも広々深々と通じてるのだろう。
ブックマンとの何の注釈も無い会話は、弟子の俺が聞いてても首を傾げることが多々ある。
畑が違うコムイとの会話なんてもはや地球外言語だ。


ー」


腰を抱え込んだ腕を更に強める。
髪越しにも耳朶に甘く噛み付いてやる。
そして直接脳へと注ぎ込むように、低く、囁く。


「───かまえよ」


しかし、ページを捲るの指先を阻むこと能わず。


「はいはい」


それどころか、ゆったりと座り直されたりして。
一見素っ気無いそれに乗じて、振り返り様にもちゅっと音を立てて、
あやすようになんてキスされたりなんかして。
さもすれば。
こちらは鮮やかに出鼻を挫かれてしまったりで、不覚にも間抜け面を晒すハメになる。
可笑しそうに笑うの声が、重なる肌越しに心地良い振動として伝わってきた。


「………そんだけ?」
「昨日一晩掛けてたっぷり構ってあげたでしょ?」
「んじゃ、また今から構って。
 むしろ全力で構い倒すというか押し倒してイイ?」
「読書中」
「本に負けたさ…!!」


負けた、優先順位で、本に。
よよよっと多少大袈裟にリアクションをとった節はあるが、
実際のところ、内心は少なからぬダメージを受けていたりする。
がっくりと肩を落としうなだれて見せればは、
首から上で振り返ると、そのしなやかな指先でこの唇をなぞって微笑んだ。





「こうして朝から可愛い彼氏を背凭れにベッドで読書するのも私の幸せなの」





こうして朝からベッドの上で極上の彼女に背凭れにされるのが俺の幸せなのだと、
知っていては、そうやって綺麗に穏やかになんて微笑って見せるんだ。

香月澪サンより、430000hitsキリリク『ラビ夢(甘)』でお送りしました。
ラビソファ、お気に召して頂けたでしょうか?(笑)
少しでも気に入って貰えれば嬉しい限りです!

image music:【CALL YOUR NAME.】_ 坂本 真綾.