十
戒
俺の人生なんざおそらく、九九で処理できる程度のもんさ。
いや、もしかしたら両手の指どころか片手の指でも足りるようなモンかもしんない。
その間、ほんの僅かな時間でもから離れて呼吸することが辛いんさ。
だからさ、どうか。
俺が傍に居ない時は、俺がそうして呼吸もまともにできずに喘いでる事、思い出してよ。
「だとしたら、ラビが酸欠で死んだら死因は『私』になるのかしらね?」
はどんな俺が好きなのか。
全部、全て、何もかも。
端から端まで1mm残さずこなしてみせっから。
ちょっとだけ、カッコつける時間をくれさ。
「『飾らない貴方が好き』なんて良く聞く口説き文句だけど…、ねぇ?」
俺のコト、頭の天辺から足の爪先まで信じてよ。
そんだけで俺は、御天道サンなんて軽く見下してやれるぐらいシアワセも絶頂に昇れっから。
「ふふ、それじゃあ神が不憫ね。
四六時中ラビのニヤけた顔なんて拝まなきゃならないんだから」
焦らさないで。
懲らしめないで。
俺"ばっか"にしないで。
には俺以外にだって大切な人間はたくさん居るんだろうし、
これからもそれはが生きてる限りどんどん増えていくんだろうさ。
大いに気に食わねーけど。
けど俺は違う。
俺にはしかいない、以外いらねぇんだ。
「若いクセに視野を狭めないの」
だから俺にその多くを語って。
たとえその全てを理解できなくても、その全てを記録してみせっから。
「折角の容量を無駄遣いしないように、ブックマンJr.」
俺をどんな風に愛したか、忘れないで。
俺がどんな風に愛したか、忘れないで。
俺はいつも、いつでも、いつまでも、忘れないから。
「どうせ『どんな手を使ったって忘れさせないけど』とか危険思考してるんでしょう?」
俺を捨てる時は、俺を殺して。
そして俺を殺すその一秒前に思い出して。
俺はをくびり殺せる掌を2つも持ってたのに、
それでも隣で眠ってたの白い首筋に手を掛けたことなんて無かったコト。
「第2ラウンドとばかりに寝首を掛かれたことはあるけどねぇ?」
俺が拗ねたり、ヘソを曲げたりするのをわざと見て見ぬフリを決め込む前に、
何で俺がそんな風にに八つ当たったのかを考えて。
もしかしたらずっとの声を聞いてなかったのかもしんないし、
もしかしたらずっととキスしてなかったのかもしんないし、
もしかしたらずっとを抱いてなかったのかもしんない。
そしたら"大人"らしく"大人しく"、俺に声を聞かせて俺にキスして俺に抱かれて。
「まぁ子供の我が侭を聞いてあげるのが大人の仕事だものね」
俺が歳とってブックマンみたいなジジイになっても、傍に居て。
も俺と一緒に歳をとって、そんでもって綺麗なばーさんになって隣に居て。
そんで「手間の掛かる子」でなしに「手間の掛かる人」とか何とか言って、
今みたく笑って俺の世話を焼いて。
「ラビがブックマンみたいに可愛いおじいちゃんになるのなら考えてあげる」
俺が死ぬ時はどうか、その最期の一瞬、傍に居て。
最後まで俺から目を逸らさないで。
最後まで俺を手放さないで。
最後まで俺のモノでいて。
さえいれば俺は、きっと心から笑って死ねるから。
「それは困ったわね。
私は恋人より一日早く死ねればと思ってるのに」
ま、要するに。
俺はどうしようもねーぐらいのコトが好きってコト。
「可愛らしい十戒
プロポーズをありがとう」