With
or
without you


真っ直ぐな背筋。
機械じみた無駄の無い動作。
高く結った、クセの無い長い髪。
切れ長の眼。
覗く、鋭い眼光。

艶を消した黒。
威圧的な闇の色。

目の前で刺身定食を食す神田は、相変わらず惚れ惚れする男前だった。


「…何だ」
「いや、相変わらずイイ男だと思って。見惚れてたのよ」
「ハッ! 大概暇してんな」
「まぁ神田の観察日記が書けるぐらいにはね」
「………ハァ!?」


孤高。
まさに神田のためにあるような単語だと思う。


「やぁね。冗談よ」


第一印象は美青年。
第二印象は偏屈。
結局定着した印象は、可愛げのない不器用な犬。

初任務だとコムイから神田を託された時には、
まぁまた随分と面白いのが来たと思ったものだけれど。
それがこうして相棒となって、一緒に食堂で食事をしているのだから人生は判らない。
否、"判らない"のではないか。
"面白い"のだ、人生は。
少なくとも私にとってそう。
神田と居ることに価値を見い出している私にとって、今の人生はこの上無く"面白い"。


「食べないならその鮪のお刺身ちょうだい」
「待てコラ、オイ…!」
「うーん、美味。
 あ、もしかして好きなモノは最後に残しておくタイプ? ってことはB型?」
「───…叩っ斬るッ!!」


ならば。
今こうして片手に箸を持ちつつも六幻を抜こうとしている神田はどうだろうか。
人生は判らないものだと。
人生を面白いものだと。
私と居ることに価値を見い出してくれているだろうか。


「ねぇ神田」
「何だ。辞世の句なら一言で済ませ」
「今度、本場のお刺身食べに行こうか」


今すぐでなくともいい。
これからでも"まだ"時間はある。


「………」
「勿論、私のおごりで」


孤高。
そんな単語が嫌味な程に似合う神田だけれど。
私が神田に対してそうであるように、
誰かと居ることに、私と居ることに何か一欠片でも温かいものを見い出してくれればいい。


「どう?」
「…お前のおごりなんだな」
「そう。私のおごり」


判らないからこその、人生。
面白いからこその、人生。

だから、ほら。





「───考えておいてやる」





これだから神田と居る人生はやめられない。



刺身に目がないのは私。
貝類と光り物と軟体動物はからっきしですけど、それ以外は大好きー。

image music:【Wind】_ Akeboshi