彼女の姿態を一言で表せば『妖艶』。
けれどその気さくで姐御肌な態度がそれを中和して『美人』。
更に時折見せる、本人曰くの"お茶目"な態度がそれを良い意味で劣化させて『綺麗』。

それがの容姿に対する周囲の評価である。


Rest my mind.


さんって…何だか"お母さん"って感じがする」


そんなことを、ぽつりと呟いたのはアレンだった。


「やだ、私ったらそんなに老けて見える?
 せめて綺麗な"お姉さん"ぐらいだと素直に喜べるんだけど」
「あ、いや、そういうことじゃなくて…!」


現在位置、黒の教団・談話室。
この時間帯、談話室の利用者はそれほど多くはない。
見渡す限りでは、アレンとその隣に座るリナリー、
またテーブルを挟んで向かいのソファに座った
加えて休憩中の科学班面子やら探索部隊がぽつりぽつりとまばらに人影を作る程度である。
そんな中任務帰りのエクソシストが3人、ほのぼのと世間話に花を咲かせていた。


「何て言うか…頭を撫でてくれる時の仕草とか、
 少し低めの落ち着いた声とか、もしお母さんがいたらこんな感じかなって」


って、僕は養父さんしか知らないんですけど。
言って、どこか照れたような仕草でもって頬を掻いたアレン。
ともすれば「確かに!」とリナリーが笑って同意する。
対して当のは穏やかな、けれどほんの少し困ったような苦笑を浮かべた。


「こんな大きな子供がいるような齢じゃないんだけどねぇ」


しかしその表情はまんざらでもないといった様子で。

彼女の姿態を一言で表せば『妖艶』だろう。
『美貌』と称せる程に造りの良い顔。
理想的な曲線を描く身体。
そして艶やかな動作仕草の一つ一つ。
しかし不思議と息の詰まるような雰囲気を与えないそれら。
が、それもこうした気さくで姐御肌な態度がそれを中和するのか、
不思議なもので『美人』という表現をまず思い起こさせる。
更に時折見せる、本人曰くの"お茶目"なおどけた態度、
特に神田をからかったりコムイを叱る時に見せる言動が、
それらを良い意味で劣化させて『綺麗』に収着する。

同じエクソシストや科学班だけだなく、探索部隊からも親しみを持たれている彼女。
その人を惹き付ける大きな魅力というのはきっと外見ではなく、
内面、つまり相手にみせる深い理解と包容力、
もっと言い換えれば『母性』に近いもののせいなのだろうと、アレンは思った。


「まぁ、アレン君みたいな素直で可愛い子供だったら欲しいわね」


パタパタと飛んで擦り寄ってきたティムキャンピーを指先であやしながら、
は穏やかに笑った。


「ただ、神田みたいな捻た子供はちょっと考えものだけど」


と、その笑顔が少々の皮肉を含んだそれに変わる。
の目線の焦点が自分達の背後へと定められたことを感じ取って、
アレンとリナリーは彼女の視線を追って首から上で振り返った。
するとそこにあったのは、アレンにしてみればここ最近ようやっと見慣れた凶悪な面相。
その伸ばされた背筋と同じくして真っ直ぐな黒髪を高く結い上げた男、神田だった。


「アホか。テメェみたいな恥知らずな母親、こっちから願い下げだ」
「本当に可愛気の無いガキねぇ」
「あァ!?」


まぁ座んなさいよ。
言って自分の隣をぽんぽんと叩いたに対し、
神田は「テメェらと馴れ合う気はねぇ」と悪態を吐いた。
そして苛立ったような声と表情で「任務だ。コムイんトコ行くぞ」と用件だけ告げると、
の意向を確認することもなく黒い外套の裾を翻してさっさと踵を返す。
それに苦笑を零しては、「もう少し躾が必要ね」とゆったり腰を上げた。


「それじゃあね。アレン君、リナリー」
「はい。任務頑張って下さい」
「気をつけてね」
「ふふ、ありがとう。
 そうねぇ、リナリーみたいな可愛い女の子もいいわね」
「嬉しい! ならコムイ兄さんとか旦那さんにどう?」
「あはは、そうね。選択肢の一つとして考えておくわ」


そうして去り際によしよしと頭を撫でられた二人は、
が神田と足並みを並べたのを確認すると顔を見合わせ笑みを零す。





「訂正。お姉さん、だね」
「うん、お姉さんよね」



アレン君とリナリーが可愛くて仕方無い、と。(結局ソコなのか)
今週号(52号)のアレン君を涙ながらに頬を叩いたリナリーは可愛かったなぁ。