流した涙も
後は
君を守ると、決めた。
君を守るとそう決めた。
「だから、さようなら」
そのためなら何だってすると。
どんな手段を講じても。
どんな犠牲を伴っても。
君が穏やかで静かな平穏の中で笑っていてくれるのなら、
僕に惜しむものなど何一つとして無いから。
「それが、貴方の望みなの…?」
「ええ」
そう、それがたとえ。
大切な君を、守りたいと願うその君さえも傷付け悲しませるとしても。
「私が…居なくなることこそが、貴方の願いなのね…」
「そうです」
僕に迷いは無い。
「それが貴方の願いなら…、私、は…───」
君を傷付けて、振り返りそうになるけれど。
君を悲しませ、立ち竦みそうになるけれど。
心が軋んで何もかもを見失いそうになるけれど。
たとえ其処が僕の居ない世界でも、僕の無い未来であっても。
大切な君が、愛しい君がこの先もずっと幸せに微笑っていてくれるのならば僕は。
「───…さよう、なら…弁慶」
初めて見た君の泣き顔は。
春雨に散る太白の桜のようにとても透明で、綺麗で、悲しかった。
流した涙も後は花となり風となりきっと君に幸せを招くから。
image music:【 硝子玉 】 _ 椿屋四重奏.