イムラドリスと
星の主


!」


アスファロスを駆って、一足先に立ち戻って来た裂け谷では、
予想外にも、門前にて舘の主に出迎えられた。


「エルロンド、すぐに手術の用意を」
「もうしてある」
「さすがね」
「此方へ」


出掛けるに際して『怪我人を連れて帰って来る』と言い残しておいたのが功を奏したのか。
どうやら準備は完了しているらしい。
フロドを横抱きに抱えたままアスファロスから降りる。
振り返り「良く頑張ったわね」と白馬の鼻頭に感謝のキスを贈って、
愛剣と共に手綱を側に居たエルフに預けた。
エルロンドと目が合う。
一つ頷き合って、足早に舘内へと向かった。
歩きながらもフロドの容態を診るエルロンドに手短に事のあらましを説明する。


「肩にモルグルの刃を受けてる」
「なんと! …するとお前の手助けがいるな」
「言わずもがな」
「相変わらずの先見だな」
「お互い様よ」


医術室に到着。
寝台(というか手術台)へとフロドを丁寧に横たえる。
小さく呻き声が上がった。


「刃を受けてどの程度だ」
「確か14日よ」
「そうか…一度、傷口を開く」
「了解」


前髪を払い、玉のような汗を浮かべるフロドの額に掌をかざす。
いわゆる"魔法"というやつなのだが、しばらくそうしていると荒い息が多少落ち着いてきた。
それを見計らってエルロンドが薄い銀の刃で傷口を開く。
すると一瞬とびくりと身体が強張ったが、
額に翳すのとは別のそれで小さな手を握ってやると、すぐに緊張が解けた。
どうやら魔法(というのも本当こそばゆいんだけど)が効いているらしい。
そう、要するに私は今麻酔代わりの役割を果たしているのだ。


「かなり深くまで入り込んでいるな…」
「でも、取り出さなければ残り刃は更に彼の心臓へと向かって肉を蝕んでいくわ」
「…判っている」
「大丈夫よ、エルロンド。貴方の腕は私が保証する」
「ああ」


そうして夜通し、夜が開けて朝日が昇り、
頂上へ達した頃にようやく、彼の小さな身体の中から取り出された。



エルロンドとの親友っぷりを、と。
ちなみにガンダルフは大して役に立たないので閉め出しくらってます(笑)

というか、また原作と日にちがずれた…本当は3日後に刃が取り出されます。