キラキラ星


「「ねえ、どうしてはグロールフィンデルのことをフィンデルって呼ぶの?」」


カウチにゆったりと腰掛け本を広げる私の両脇を占領するのは未だ幼き双子星。
両サイドから同時に話しかけられるのにも慣れたもので、
とりあえず、いつも通りに片割れを抱き上げ膝と膝の間へと座らせる。
(もう膝の上に乗せるには多少サイズ外な程度には成長しているのだ、二人とも)
こうすればいちいち視線を左右に振り乱さなくて済むからだ。
双子達の方もいつの間にやら慣れたもので、片割れが抱き上げられれば、
もう片割れは言われずとも、私が僅かにズレてスペースを空けた所に腰を落ち着ける。
今回はロヒア。
理由は簡単、この間抱き上げたのがラダンだったから。


「どうしてって…ラダンやロヒアと同じで愛称として省略してるのだけど?」
「だったらどうして『グロール』でなしに『フィンデル』なのさ?」
「普通なら『グロール』じゃない?」
「ああ、そういうことね」


双子の言いたいところを理解する。
要するに、略するのに何故『グロール』ではなく『フィンデル』なのか、と。
つまりはそういうことで。

確かに普通、愛称ならば頭に近い部分を取ってそれとするだろう。
それこそ双子の言う通りに。
けれど私は彼のことを敢えて『フィンデル』と呼ぶ。
何というか、さすがは子供の感覚。
これが大人ならば「そういうものなんだろう」として、
さして気にとめることもなく素通りしてしまうところだが、幼子はといえば違う。
二人はまだそうした些細な疑問を片っ端から口にする年頃なのだ。


「既に『グロール』という名の人物を知っているからよ」


グロール。
ダイン一世の末息子であるドワーフだ。
かつて七つの指輪の一つを所持し、後息子のスラインに譲ったスロールの弟と、
そう言った方が判り易いかもしれない。


「それにどちらかといえばフィンデルの方が呼び易いしね」
「へー」
「ねぇ、グロールってどんな人?」
「もう少し大きくなったら教えてあげる」
「「ええー」」


彼が登場するのはこれより2500年近く先の話なのだから仕方ない。
ふくれっつらでブーイングを寄越す双子の額に一つずつキスを落とす。
すると、むぅっと唸りながらもしぶしぶ引き下がった双子星。
可愛さも素直さも今が盛りか。
これがもうしばらく(といっても数年後だけど)すると、
手の付けられないやんちゃぶりを発揮するようになるのだから多少惜しい気分になる。


「ほら、もうすぐエレストールの授業でしょう?」
「「はーい」」





そう、それは。
裂け谷の双子星がスキル『おサボリ』『とんずら』を覚える少し前の話。



『フィンデル』なる愛称の謎解明。(何)

ちなみにヒロイン、人前ではあまり金華公のことをフィンデルとは呼びません。
普段はきちんと『グロールフィンデル』。
で、二人きりの時とかに『フィンデル』。そんな感じで。
エレストールのことは時折、『エリー』と呼んではからかったり。(笑)