塗り潰すように
愛を尽くすこの唇は
「…痛々しい?」
の胸には派手な古傷がある。
左肩から右脇にかけての深過ぎる刀傷。
傷痕が本当に見た通りなら、どうしてお前は今生きてるんだと問い質したくなるそれは、
聞くところによると孫策様を刺客から庇った時に負ったものだという。
「まぁ確かにあの時は、
運良く華陀殿が通りかかってくれてなかったら普通に死んでたらしいしね」
無論、は呉を代表する武将の一人であって、
常に前線に身を置いているのだから古傷の一つや二つなど今更の話。
しかしその刀傷だけはやはり何度見ても尋常ではないのだ。
白い肌に艶かしく残った凄惨なそれ。
もう赤く生々しく肉を浮かせてこそいないが、乾き切ったといえる程の時間は経っていない。
「やっぱり雨の日は痛むのか?」と聞けば、「時々ね」とは笑う。
「俺、お前のこの古傷好きだぜ」
白い肌に映える、綺麗で残酷な傷跡。
「は? 何それ、どういう意味?」
「どういう意味も何も、そのまま意味だっつうの」
お前が俺以外の男に負わされたその傷。
「俺だけだろ」
お前が俺以外の男を庇って負ったその傷。
「───こんな風に、この傷をじっくりと拝めるのは」
それでも、この古傷を無遠慮にも唇でなぞれる男なんざきっと俺だけ。
凌統の何が反則かってあのチャージ4とエロイ気怠げな声だと思うわけです。