15.


ひらひら、と。

貴女の髪へ、頬へ、唇へ。
舞い散り触れるその薄桃色の花弁になれば私は。
事も無く、何の障りも無く、直に貴女に触れることができるのに。
儚げにその花弁散らす桜になれば私は。
貴女のその愛おしげな視線を独占することができるのだろうに。


「もしこの身がこの樹ならば…」


馬鹿らしい。


「趙雲?」
「あ、いや…」


しかしそんな自分の独り言ような呟きの一端からも、全てを悟り知ったらしい彼女。
使い古した表現しか思い付かない自分の貧相な語彙力に落胆するが、
彼女はそれこそまるで華がほころぶように微笑んで。


「馬鹿ね」


まるで桜の花弁が春風に舞い降るように。
ふわり、と。
一つ掠め取られた唇。





「趙雲が桜になんてなってしまったら、こんな風に直に触れたりできないじゃない?」





けれど貴女はそうしてまるで桜のようになんて私に触れるではないか。


舞う
そして堕ちる