背中合わせの
僕ら


そう、それは蜀国境沿いにて魏との小競り合いでのこと。


「諸葛亮如きの率いる劉備軍なんぞ恐るに足らず!」


そんな暴言を。
もとい命知らずな鼓舞をしたのは、どこにでもいそうな、
実際どこにでもいたりする、実に代わり映えのしない顔立ちの準武将。


「───諸葛亮"如き"?」
「劉備軍"なんぞ"───?」


しかしながら。
使った本人としては"鼓舞"であったそれも、
本陣両サイドにて拠点守備にあたっていた、立派な蜀の一武将である二人、
姜維とにとっては"挑発"と大差あるものではなく。


「丞相、殿」
「先生、劉備様」


戦闘技能は対一武将にしか効果が無いはずであるにもかかわらず。
ぴくりとこめかみを引き釣らせ、静かに殺気だった年若い武将は二人は。


「「あの地味顔武将討ち取って来ます」」


見事に声を重ねて、君主と軍師にその旨を告げると、
敵本陣手前の拠点に向かって進軍を開始した。


「あ、ああ…」
「行っていらっしゃい」


二人を送り出し、そうして本陣へと残された君主と軍師。
少しばかり呆気にとられた劉備とにこやかに白羽扇を揺らめかす諸葛亮。


「あの二人は大丈夫だろうか…」
「大丈夫ですよ。
 姜維もも戦場で冷静さを失うような真似は決してしませんから」
「しかし、先程のあれは明らかに目の色が変わっていたように思うのだが…」
「ふふ、あの愛弟子達は逆上した分だけ冷徹の色を濃くする性質を備えているのですよ。
 ですから心配には及びません。
 その点につきましては、私のこの首をもって保証致します」
「そ、そうか…」


そうして。
小一時間程後、暴言を吐いた顔無し武将の首と、
「「ああ、そういえば」」と、まさに"ついで"として敵本陣を制圧し、
戦功を挙げて戻って来た年若い軍師兼武将の二人は。


「御苦労様でした、姜維、
 二人に怪我が無いようで安心しました」





敬愛してやまない師の笑顔に迎えられ、
二人揃って年相応の、微笑ましい照れ笑いを浮かべた。



とりあえず一本ぐらいは書いておこう思っていたエンパイアーズネタ。
パッと思い付いて15分で書き上げたSS。ほのぼの。
そして何故かほんのりとギャグ。
ううん、諸葛亮先生を絡ませるとどうしてもギャグにすっ転びそうになる…(笑)