羽折りし不実に喘ぐのか
お前はワシの手が好きだという。


(無骨で傷だらけの掌は憧れなのだという)


お前はワシの声が好きだという。


(穏やかじみた口調は安心するのだという)


お前はワシの笑った顔が好きだという。


(この造り物の笑みが嬉しいのだという)





ああ。
この手を斬り落とせたら。
この喉を掻き切れたら。
この顔を踏み躙り潰せたら。


「自分で織り羽折っておきながら、不実に喘ぐか…」





こんな道化じみた髑髏の仮面の下、乾いた喉を引き攣らせずとも済むものを。



息を詰まらせるのはこの肺。
喘ぐのはこの胸。


image music:【一刹那】_ 椿屋四重奏.