指の先に染み付いた もどかしい記憶に立ち眩む
「俺はお前が許せねェ…!!」


間近にある怒りに滾った男の瞳に、映り込んだ自分の顔がこの上なく不愉快だった。


「アイツは馬鹿じゃねェ!!」


当たり前だ。


「アイツは疑うことを知らないワケじゃ決してねェ…ッ」


何を言うかと思えば。
だから何だ。
そんな事は知ってる。
知り尽くしている。
お前になぞ言われるまでもない。


「それでも、今もアイツがお前を信じてるのは、
 お前の中に信じ続けるに値する"何か"を見い出したからだろ!?」


そう、なのだろうか。


「なのにお前はアイツを殺すって言うのかよッ!?」










『やっぱり好きです、カクさんの手』





指の先に染み付いた、もどかしい記憶に立ち眩む。



を殺すのかだと? 
そんなことはワシが聞きたい。


image music:【空中分解】_ 椿屋四重奏.