オレンジと黒の炎に塗り潰されたその世界は
まるで不知火のように
「お前も不運だったな…」
「!!」


目の前にはしなやかな巨躯。
鮮やかなオレンジに揺らめいて照らし出されたそれは、静かに、不穏にこちらを向いた。
麦わらの船長と剣士を建物ごと切り捨てた左足がゆらりと一歩、距離を詰める。
このままでは。
後ずさろうとして、後が無いことに気付いた。


「残念だ」


見知ったはずの、けれど見知らぬその人は、低く唸るように茶番の終幕を宣告した。


「ルッチ、さん…っ」
「大人しく下に居れば死なずに済んだものを」
「よせ…やめろ、やめてくれルッチッ!!」


アイスバーグさんの悲痛な叫び声が鼓膜を裂く、胸を抉る。
ああ、ごめんなさい。
私はアイスバーグさんを守るために来たはずなのに。
結局アイスバーグさんを守るどころか、最後まで何の役にも立たず。


「目撃者を生かしてはおけないからな」


ああ、私はここで死ぬの。


「短い付き合いだったな」


私はまだ、カクさんに、何も。


───ッ!!!」





滲む視界の端にカクさんを捉えたと思った瞬間、世界は白く遠く消え去った。



連載っぽく続く…といいな(汗)

image music:【螺旋階段】_ 椿屋四重奏.