嵐の空を見上げて私は鉛色の天蓋に囁く
雨と風が辛い。
アクア・ラグナが、もうすぐそこまで。


「───…っ、痛…ッ」


煉瓦壁叩き付けられ、痛む背中を何とか堪えて身を起こす。
身体の節々がぎしりと軋み、特に左肩の付け根がずきりと鈍い音を立てた。
掌を押し当てる。
どうやら折れてはいない。
幸いなことに、ヒビが入ったというわけでもないらしい。
重度の打撲。
そんなところだろうか。
ぶつかる寸前に咄嗟にも受け身をとったのが功を奏したようだった。


「急がない、と…っ」


ネコネコの実。
話には聞いていたが、実際に目の前にしてみればそれは情報以上のものだった。

鉛色の空を見上げ、現在地を確認する。
随分と飛ばされてしまった。
工場があんなにも遠い。
反射的にも悪魔の実の力を使わなければ死んでいただろう。


「───ああ…私、思い出したんだ…」


そう、私は思い出した。
生命の危機に、生存本能が瞬時に全ての記憶を引きずり出した。


「私は…」


私の名前は
そして。


「私は、海軍の…───」





それでも、私は。



ようやく本誌の見通しがちょっと見えてきたんで、書いてみました。
まぁコレもまた本誌の展開とズレたら撤去する予定です…(遠い目)

image music:【シェルター】_ Sugar Mama.