急がなければ。
急がなければすぐにこの裏街はアクア・ラグナに飲まれる。
急がなければあの人達に追い付けなくなってしまう。
「止めなきゃ…」
裏街をひた走る。
まとわりつくような雨と風を振り払うように、シフトステーションを目指して駆け抜ける。
「カクさん達を、止めなきゃ」
記憶が戻っても、『私』が消えることは無かった。
『私』は『私』のままだった。
ううん、それは少し違うのかもしれない。
『昔の私』は『今の私』よりも寂しい人間で、
少なくとも『今の私』からみればとても寂しい人間だった。
でも『昔の私』も『今の私』も、どちらも『私』。
『今の私』はちゃんと『昔の私』の延長上にあると判る。
「設計図を…取り戻さなきゃ」
安心、した。
記憶を取り戻した時、『今の私』はどうなるのだろうとずっと思ってた。
『今の私』は消えて居なくなってしまうんじゃないかと、ずっと怯えていた。
記憶を取り戻してしまったら『今の私』と一緒に、
この街での大切な記憶は、全部、全て、何もかも、
最初から無かったものとして消えて無くなってしまうんじゃないかと思うと、
恐くてしかたなかった。
忘れたくなんてなかった。
この水の都の事。
ココロさんやチムニー、ゴンの事。
アイスバーグさんや、職人の皆の事。
「お願い、間に合って…!」
そしてカクさんやルッチさん、カリファさんの事。
「私は…」
『私』は、やらなきゃ。
『私』が、やらなきゃ。
だって、『私』は『私』だから。
「───カクさん…っ」
『私』は『私』の大切な人達が悲しむのをこれ以上見たくないから。
CP9ページは何だか単品と連載がまざってゴタゴタしてますね…(汗)
整理したいとは思ってるんですが…さて、どう整理したもんか。