碧い街

白い二人


「こんにちは」


薄汚れた僕を見下ろしその人間は、まるでお陽様のようにふわりと笑った。


「君、独り?」


興味からか、僕に寄って来る人間は多い。
寄って来てはやはり興味深そうに眺め回してきゃっきゃとはしゃぐ。
もはや慣れ切った神経は気にもならなくなってる。
しかしその人間が違った。
「隣、お邪魔するね」。
一言断って、すとんと腰を降ろす。
そしてその膝の上へと昼食だろうサンドイッチを広げた。
いつもとは何かが違う展開だ。
鼻の頭と一緒に、胸の中心がウズウズと疼く。
ついには堪え切れず、興味本位、そろりと窺うように相手の顔を見上げた。


「あ、お腹減ってる?」


減ってる。
それはもう。

こくりと頷けばその人間は、「はい」と言ってハムサンドを一切れ寄越した。
もそりと一口齧る。
美味しい。
そうして二口、三口と食べ進めれば、
隣の人間はどうしてか嬉しそうに笑ってハムサンドをもくっと頬張った。


「君は美人さんだね」


こんな薄汚れた僕のどこが綺麗だというのだろう。
雨風に泥、土に埃と汚れっぱなしだ。
比べて。
真っ白な帽子に、青の差し色の入った真っ白なジャージ。
きっと中身だって清楚な顔立ち通りの清潔な人間だ。
不潔と清潔。
何がどうして見事なコントラストだ。
一体自分は何をしているのだろう。


「ねぇ、君はこの街が好き?」


この街は好きだ。
水路のせいか陸路が入り組んでて少々勝手が悪いが、
きらきらと青く光る水路の水面はいつだって綺麗で憎らしくは思わない。
そう、ちょうどこの隣の人間の瞳のように。
それに街の人間達も優しい者が多い。
この隣の人間がその典型例だ。

…うん?


「私はこの街が好きだよ」


何だか物凄くイイ人間のように思えてきたぞ、隣のこの人間が。


「君はイイ子だね」


薄汚れた僕の頭を、何でも無いかのようにその白い掌で撫でて彼女は笑う。





「もし行く所が無いようだったら…ウチに来る?」





勿論。

肯定するようにその手に擦り寄りにゃあと泣けば、
彼女はやはりお陽様のようにふわりと笑って僕を抱き上げた。



猫たん1匹お持ち帰り。

猫の視点でほのぼの逆ハー(カク寄りオチ)を眺めてみよう!つーわけで。
どこまで続くのか、どこへいくのか『猫シリーズ』第一段?(何故に疑問系)