「天国の扉は見つかった?」


背に、聖歌のように響いて女の声が届いた。


「天国の扉は見つかりそう?」


半身振り向けば、女が再度口を開いた。


「天国の扉は見つかると思う?」


正面から向き合えば、見知らぬ少女が問うた。


REAL
or
NOT REAL


「私も貴方と同じ」


本能が告げた。
この少女を逃がすなと。


「教えて。
 本当の私は今もベッドの中で明日の体育の授業に備えてぐっすりと眠っていて、
 今こうして貴方に片手で首ごと掴み上げられている私はその夢の中の住人なの?
 それとも今こうして貴方に殺されかけてる私こそが現実で、
 家族に友達に平和に囲まれて暮らしていたあの世界の方が夢だったの?」


だから捕らえた。
この掌で。
この指で。
その頭と身体を繋ぐ細い頚椎を。


「今貴方がそうして私の首にかけてるこの手に、あと少し力を込めたら私はどうなる?」


気道を潰さぬよう。
けれど死の感触を残して。
頚椎をへし折らぬよう。
けれど死の感覚を与えて。


「私は死ぬの?
 それともただ目が覚めるだけ?」


その瞳に映り込む男の瞳に映り込んで女は言う。





「ねぇ、教えて」





違う、この女は『同じ』ではない。

『天国の扉』、ヴィンセントなネタを。
COWBOY BEBOP夢は一応トリップ夢なんだぞーって主張もさりげなく。

image music:【AVE MARIA】_ Jerzy Knetig.