ただ
2人だけの


「あ、そうだ!
 この間、雑誌めくってたらさんの記事を見付けたんですよ!」
「え、なになにー?
 『六氷執行官と執行官・熱愛発覚!』みたいな?」
「あ、いや…ちょっと違うかなぁ、なんて…」
「おいロージー。
 コイツの口から出るモンの大概は冗談だ」
「へ?」
「うん、ごめんねロージー君。
 今のはムヒョの言った通りほんのお茶目なジョークだから、
 そんなすまなそうな顔しないで、
 『それはまた今度探してきます』ぐらいに笑い飛ばしてくれると嬉しいんだけど?」
「あ、すみません…!」
「だから謝らなくていいってば。
 それで、何て雑誌のどんな記事だったの?」
「えっと『週刊魔法律ジャーナル』のトップ記事で、
 『才色兼備・執行官の魅力に迫る』ってヤツでした」
「ああ、この間の取材のアレかぁ」
「ケケっ、オメーも大概暇してんな」
「営業努力って言ってよ。
 どっかの誰かさんがクールで硬派なんて気取ってるから、
 私が執行官のイメージアップに日々奔走してるんじゃないの」
「ハッ! 知ったことか」
「この記事ね、本当は『天才執行官・六氷透に迫る!』で組まれてたの」
「え!?」
「でもムヒョったらこれでしょ?
 だからムヒョに次ぐ実力を持つ若手執行官、
 『限りなく天才寄りの秀才』な私のトコにお鉢が回ってきたってワケ」
「随分と謙遜するじゃねぇか」
「謙遜したらムヒョがフォローして誉めてくれるかと思って」
「アホか」
「じゃあ謙遜やめ。
 輝かしく華々しく方々で取り上げられるムヒョの影で霞んでいる天才2号でーす」
「謙遜の次は卑屈か」
「卑屈にしたらムヒョがフォローして慰めてくれるかと思って」
「するかアホ」
「意訳。『照れるだろ?』」
「アホは帰れ」
「ね?何だかんだ言って冗談とか嫌いじゃないの、ムヒョって」
「………」
「やっぱりさんって凄いです…」



そんな付かず離れずの2人の距離感。
『ただ〜』シリーズ第3段。(またいつの間にかシリーズ化してるし)