【 デュランダル・シオンの個室 】
「どうもヴェクターの皆さんお揃いで。ご機嫌いかが?」
「あら、。それにキルシュちゃんも」
「こんにちは」
「ふふ、こんにちは」
「二人が揃って主任の部屋に訪ねて来るなんて珍しいね。どうしたんだんだい?」
「そういうアレン君こそシオンの部屋に堂々と居るなんて珍しいじゃない」
「べ、別にいいじゃないか。僕が主任の部屋に居たって」
「悪いとは言ってないでしょ。
 ただ今日はコソコソしてないなと思っただけ」
「ぼ、僕はコソコソなんてしてないよ!」
「今日はね」
「いつも!」
「そうそう、それでね」
「あっさりスルー!?」
「ノンノン、放置プレイ。
 さ、キルシュ」
「はい。これからファウンデーションへと買い物に出掛けますので、
 何か必要な物などありましたら何なりとお申し付け下さい」
「ハイ良くできました。
 でももうちょっと気安く砕けた感じでもいいのよ?」
「はい…」
「相変わらず親馬鹿っぷりを発揮してるね」
「主任馬鹿に言われる筋合いは無ーい」
「な…っ!!」
「そうねぇ…じゃあカレー粉に、あとローリエとクミンもお願いできる?」
「ん?まぁ構わないけど(またカレーかよ!って嘆くわね、エルザの面々…)」
「(っていうか僕のリアクションは相変わらずスルーですか、主任…!)」
「カレー粉と、ローリエにクミン…了解しました」
、キルシュヴァッサー。
 私からも物資の補給をお願いしたいのですが」
「オッケーよ。で、何が入り用?
 …っつっても聞くまでもないような気がするけど」
「はい。食器類、特にカレー皿の補給をお願いします」


日々、エルザのキッチンにて皿洗いの修行に励んでいるKOS-MOS。
ともすれば連日築かれる硝子の破片の山。
カレー皿の死亡率の高さについて、エルザに勝る船はないだろう。
製作者のシオンも、KOS-MOS自身も、出力の調節が甘いせいとの認識はあるようだが、
カウンセラーの私に言わせれば、
『許容内の損害』と割り切ってしまう辺りに問題があるのだと思うが。


「うーん、出力如何よりもバランサーに重点を置いたら上手くいくかもよ?」
「了解。次回より試行してみます」
「ん。頑張ってね」
「アレンさんは何か御入用のものはありますか?」
「え、僕?うーん、そうだなぁ…」
「10秒以内に決めてね」
「ええ!? 何でそんな僕だけ…!」
「じゅーう、きゅーう、はーち…」
「わ、ま、待ってよ!え、えっとっ」
「なーな、ろーく、ごーぉ…」
「待って! 本当待って!」
「よーん、さーん、にーい…」
「わわわっ、何で僕だけ───!!」
「…いーち、ゼロ。ハイ、時間切れ」
「そんなぁ…!」
「またの機会を御利用下さーい」
「残念だったね、アレン君」
「しゅにーん…!」





シオンの個室扉を出れば、見上げるように問いかけてきたキルシュ。


「…良かったんですか?」
「いいのいいの。
 あれがアレン君の星回りだから」
「星回り…?」


小首を傾げて、扉越しに落ち込むアレンを振り返りキルシュは不思議そうにそう呟いた。



空回りなアレシオに愛。
続いて、エルザの3馬鹿へ。