【 エルザ・ブリッジ 】
「はぁい、むさ苦しい男所帯がシケた面並べてご機嫌麗しゅう♥」
「…早々から挨拶だな、オイ」


キルシュと手を繋ぎ、爽やかな笑顔でそんな毒特盛りな挨拶をかませば、
船長はひくりと口の端を引き攣らせくっきりとこめかみ青筋を浮かべた。


「あはは、軽い冗談じゃなーい。船長ったら人相凶悪」
「うるせェ、生まれつきだ!
 これ以上ガタガタぬかすと摘み出すぞ、小娘が!」
「いやん、船長がコワーイ☆
 …と、まぁ軽い挨拶はこれぐらいにして。本題」
「本題?」
「そう。キルシュ」
「これからファンデーションへと買い出しに出掛けるので、何か入り用な物はありますか?」
「まずはトニー、どうぞ」
「そうだなぁ、夢と希望と女と…」
「入 り 用 な も の は あ る ? ( ニッコリ )」
「…タバコを1ダースほどお願いします」
「よろしい」
「タバコですね。了解しました」
「ハマーは?」
「そうっスねぇ…脆弱性含有率のカバーに新しい基盤が欲しいんスけど」
「また船長に秘密でメモリ増設する気?
 しかも索敵機能の強化基盤なんてまた高級品を…エルザの借金がかさむわよ」
「へへっ、バレなきゃオッケーっスよ」
「聞こえてるぞ、コラァ!!」
「ひっ」
「残念。また今度ね」
「マシューズ船長は何か御入用なものはありますか?」
「酒だ酒。樽で買って来い」
「…何て所業!」
「はァ?」
「キルシュのこの細腕で酒樽なんて持たせようっていうの…!?」
「あのな、オイ…」
「この鬼っ、人でなしっ!」
「………。」


大仰に芝居がかった動作でもって批難などしてみる。
これだけなら、いつも通り「出てけ!」との怒鳴り声がブリッジに響くのだが、
健気になんてキルシュに下からじっと見上げてられたりなどすれば、
さしもの船長も口をへの字に曲げながらたじりと一歩後退して。


「…焼酎一本で譲歩してやる」
「ワンカップの日本酒なら良し」
「………2カップだ」
「ま、仕方ないわね」
「あっはっは、船長もにかかっちゃおしまいだな」
「あんだとォ!?」
「いい? こういう買い物前の交渉も結構重要なのよ」
「判りました」
「三文芝居は必要ないと思うんスけどねー」
「お黙り、ハマー」



引き続き、モモ&ジギー。