テクニカルな
彼女


「ねぇアレン君。Jr.君とガイナン氏って親子なのかな?
 兄弟にしては随分年が離れてるみたいだけど」
「世襲用にセルフクローニングしたとか隠し子だとか…ゴシップはあれこれ聞きますけど」


さりげなくコネクションギアを閉じてシオンは、
まさに取り繕うためにアレンにそんな話を振った。
対して元来の二枚目半の宿命か、はぐらかされる・流されることに関しては一流のアレン。
(ごめんね…)と、ひっそりと心の中で謝罪するシオンの声が聞こえるはずもなく、
突然のシオンの話題転換にも小さく疑問符を飛ばすにとどまり、
きょとりと首を傾げながらも模範解答を返した。


「クローンではないと思います。
 ゲノム配列が微妙に違う感じ…」


そしてそんな二人の話に乗ってきたのは、ワンピース水着の少女。
つい先日保護した百式レアリエンのモモである。
愛らしい仕草で駆け寄って来て彼女はゆったりと解析結果を告げる。
驚いたように手を合わせたシオンにモモはにこりと笑った。


「凄い。モモちゃんそんなことまで解かるの?」
「モモは観測用ですから。
 …そうですね。
 親子兄弟というほど差異はないのに、同じ構造とはいえないような…」
「そんな存在ってあるの?
 塩基配列が0.1%違えば完全に他人なのに…」


当の本人が離れているのをいいことに、ひょんな事から始まった雑談。
あれやこれやとアレンの噂談を主軸に憶測が飛ぶ中、
3人の背後にはやはり当然のようにとある1つの影が歩み寄る。


「だーれが隠し子だって?」


にやり、と。
したり顔でアレンの背筋を撫で上げたのは、他に誰がいようか、
話題の本人であるクーカイ・ファウンデーション代表理事の片割れだった。


「い、いやぁ…あ、あはは!」


泳ぎまくっている目で明後日の方向を見遣るアレン。
その口元にはしっかりと乾いた引きつり笑みが浮かんでいた。
ぶっちゃけ背中は冷や汗ダラダラなのは本人だけの秘密だ、などと思っているのだろう。
もはや顔から筒抜けである。
ともすればそんな二枚目半をからかう気満々のJr.は、周囲が苦く笑って見守る中、
何をかしてやってやらんと人の悪い表情でアレンに詰め寄った。
しかし。





「ふふ、そうなんでーす。
 表沙汰にはできないけれど、実はJr.は私とガイナン理事の子供なの」





それもJr.に背後から抱きつく、もといJr.を背後から抱きしめる形で登場した、
黒いビキニ姿のの笑みに見事取って代わられることになった。





「文字通りの"企業秘密"だからよろしくね♥」
「───はぁッ!?
 ば、馬鹿言うんじゃねぇよッ!! 誰が息子だ、誰が!!」


Jr.をすっぽりと抱き竦めにっこりと笑う
その腕の中で怒りからかはたまた恥ずかしさからか、
おそらく両者プラス嫉妬だろう、真っ赤になってギャンギャンと喚くJr.。
何がどうして様になる構図である。
わりと年齢不詳な顔立ちと雰囲気を持つのせいもあってか、
その体制は年若い母親とその息子と言われれば、わりと納得のいくものがあった。


「大体お前は俺の───」
「やだ、軽い冗談じゃない。
 こんなうら若い乙女にJr.サイズの子供がいるわけないでしょ。
 それに、ねぇ、モモ?」
「はい。Jr.さんのゲノム配列とDNAの型分布を考えると、
 さんが母親である可能性はゼロパーセントと言えます」
「ね?」
「『ね?』、じゃねぇっての!」
「大人げない。そんなヘソ曲げないの」
「大人げないって…、実際Jr.君は子供なんだし」
「ぐ…」
「ああ、そうだったわね。
 Jr.君はおこちゃまなんだからしょうがないんだったわね?」
「〜〜〜!!」
「はいはい」
「??」


小首を傾げるケイオス以外の一同を余所に、
けたけたと笑うをギャンギャンと追いかけてJr.は再び波間へと戻って行った。



となればガイナンは「なら早速公式発表の場を設けなければな」とか何とか言って、
メリィ&シェリィと一緒にJr.イジメへ加わるわけですよ(笑)

image music:【Jet cooster★girl】_ TOMOSUKE.