Red
or
Black
or
White
?


「お前、赤と黒と……あと白。どれが好きだ?」
「何、急に」


デュランダル内のプレイルーム、要するにカジノにて。
誘われたルーレットを楽しんでいたところ、
急にそんな事を聞き寄越してきたのは誘ってきた当の本人であるJr.だった。

その手軽さと、華やかさからカジノの女王と呼ばれるルーレット。
アメリカンではなくヨーロピアンのホイールを入れている辺り、
自分の艦で稼ごうなんて不届き千万この上ないが、
台を仕入れた人間の、本腰の入れようが窺える。
(まぁ、私も私でヨーロピアンの方がまったりしていて好きなのだけど)
その証拠に目の前の相手は先程からずっと一目賭けという、
半ばヤケなのか、否、むしろ意地なのか、実に男前な戦方を披露してくれている。
いや単に、モンテカルロ信奉が見事惨敗に終わってグレぎみなだけかもしれない。
わりと慎重派で貧乏性な私は、基本は気長に楽しむダランベール法、
途中から気が向くと逆モンテカルロ法に転向なんていう賭け方をしているのだが。

もう何度目か判らない白いボールが黒と赤の濁流へと落とされる。


『Spin.』
「大したことじゃねぇよ。っと、来いや!」
「またピンポイントにマーカー? 懲りないわねぇ。
 大したことじゃないわりに目がマジだったわよ…、こんなもんかしら」
『No more bet.』


Jr.はまたもやSingle-number bet、赤の19に。
対して私は1・3・5の筋にチップを撒く。


「でもって、黒」
「…即答かよ」
「だってガイナン理事って容姿も物腰ももの凄く好み、
 というかモロにストライクゾーンだったりするのよね、実は」
「!?」


赤と黒と白、どれが好きか?

赤はJr.。
黒はガイナン理事。
白はアルベド。
つまりはそういうことで。


『Congratulations!』
「私の勝ちね?」


妙に抑揚のある合成音声が、色と数字、そして私の勝利を告げた。


「アルベドが相方じゃ精神的にキツイだけでなしに、身の方も保たなそうだしね」


今日はここまで。
言って、問答無用にも席を立つ。
「あ! 勝ち逃げかよ!」なんていうブーイングは背中で聞き流した。
そしてJr.がついて来ないなんて微塵も思っていないような足取りで台を後にすれば、
やはりというか何というか、私同様手元のチップをきちんと預けてから、
「待てよ!」やら「無視すんな!」なんて、ぷりぷりと後を追って来たJr.。
可愛いなぁ、なんて込み上げてきた笑いは何とか口元で噛み殺した。


「ま、理想と現実は別よね」
「…どういう意味だよ、それ」


追い付いたJr.が隣に並ぶ。
と、むくれたその頬に、ひとつ不意打ちまがいにもキスを落として。





「───だって実際、心底愛しいのは黒ノワールでなしに赤ルージュだから」



ブラン(=アルベド)は…?
つかフランス語は優雅で素敵だけれど、難し過ぎていけない。←途中で挫折した女

またもや懲りずにJr.夢。
自分でも、まぁよくネタが尽きないもんだと呆れてます(笑)