ラブ&ライク


「お帰り、ケイオス!」
「っと。ただいま、


ブリッジとキャビンを仕切る扉の敷居に立つ少年の、その無防備なへと飛びついたのは、
良く言えば懐古的な、でなければ時代錯誤な、
そんな医師の白衣をゆるく着こなした少女だった。


「ハマーもトニーも無事そうで何よりだわ」
「おうよ」
「ま、今回ばかりはかーなーりヤバかったっスけどね」
「みたいね」
「…おい、待てや嬢ちゃん。俺の心配はどうした?」
「えー、だって船長はちょっとやそっとじゃくたばったりなんてしないでしょうよ」
「どういう意味だコラ」
「そのまんまの意味よ。
 それにまだ借金だってたんまり残ってるわけだし。
 『死んだってこの船は手離さねえ』って断言したのは船長じゃない?」
「けっ、そういやそんな事も言ったっけな」
「ふふ、船長もにかかっては形無しだね」


エルザがファウンデーションへと帰投する際はいつも、
わざわざケイオスを出迎えに来るは、
ケイオスがエルザから降りて来るよりも先にエルザの中へと顔を出すのだった。
今回のもそれ。
少々疲弊の隠せないエルザの男所帯も、
普段と変わらないの少女の"らしい"登場に、皆各々に笑顔を浮かべた。


「降って湧いた災難とばかりに色々と大変だったみたいね」
「うん、まぁグノーシスに食べられたりと色々とあったよ」
「あはは、何だか笑顔で言うことじゃないわよ、それ」
「そうだね」


背後から抱きつかれた姿勢のまま交わす笑顔の会話は、
見ている分には微笑ましいが、聞いてる分には十二分に物騒な代物である。

そうして、修繕部位の確認をしてから行くという三人をブリッジに置いて、
一足先にエルザを降りることにしたとケイオス。
仲良く腕なんて組んで歩いたりしてるのだって、
何ら特別なことはない、少なくとも二人にとっては『いつものこと』なのだった。


「どう、『彼女』には会えた?」
「どうかな…会えたのかもしれないし、会えていないのかもしれない」
「そう」


肯定ではなく、けれど否定でもない。
そんなケイオスの曖昧な回答にも問い返すこともなく、
むしろ納得すらしたように、はどこか楽しげに短く相槌を打った。
もしもこの場にデュランダルの小さな艦長がいたら、
まず間違いなくツッコミを入れていたことだろう。

この"二人完結"な会話と、そして仲睦まじげに絡めたその腕に。


「あ、そうそう。この間浜辺ビーチが完成したの」
「へぇ。この間来たときはまだ工事中だったからね」
「後で皆で行きましょ」
「うん。楽しみだね」


そんなこんなで。


「…よう」
「ありがとうJr.、助かったよ」
「後で詳しく事情を聞かせてもらうぜ…ったく、何がどうなってんだか。
 中央電脳ママが風邪ひいちまったんで調査も分析も暫くはお預けだ」
「災難だったね」
「よく言うぜ…───ってかな、何でお前ら腕組んでんだよ!」
「ははーん、Jr.ったらヤキモチ?」
「ば、馬鹿言え!」


実に親しげにひっついて降りて来たとケイオスを、
半眼でむっつりと眺めるJr.という、一見して何とも不可解な構図を。


「しょうがないわねぇ…ブリッジまで手繋いでく?」
「そんなみっともない真似できるか!」
「みっともないなんて失礼ね。
 それじゃあケイオスと手繋いでいきますか」
「〜〜〜っ、繋ぐ! 繋ぎゃあいんだろ!」
「何それ。無駄に偉そうねぇ…っていうか本気?」
「はは、もJr.も相変わらずみたいだね」


小首を傾げて見つめるハメになったのは、
人間にアンドロイド、サイボーグにレアリエンという多種多様な偶発の客人達だった。



ヒロイン、建前が必要無い分、ケイオスに対してはスキンシップ全開。
抱き着いたり手を繋いだり押し倒したり(ぇ)とやりたい放題。
きょうだいの延長みたいな感じです。

しかしヒロインは一応身長162cmぐらいを想像してるんで、
Jr.は140cmぐらいだから…手繋いだら見てまんまの姉弟(笑)